日本調理科学会誌
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45 巻, 6 号
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総説
報文
  • 粟津原 理恵, 石谷(佐藤) 久美, 原田 和樹, 遠藤 伸之, 長尾 慶子
    2012 年 45 巻 6 号 p. 393-402
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
     抗酸化能を高めた洋食献立を立案するために,具体的な加熱調理操作や食材の下処理,食品の組み合わせ方法を検討し,料理単品および献立単位での抗酸化能評価を行った。
     栄養面に配慮した基本献立を立案し,主食は米粉パンとして副材料を,汁物のコンソメスープではストックの調製方法を,主菜のアジのソテーではソースの食品選択を,付け合わせのジャガイモ料理では品種などの食品選択および加熱調理操作を,副菜1のベビーリーフサラダおよび,副菜2のヨーグルトゼリーでは,かけるソースやドレッシングの食品選択をそれぞれ変えて,抗酸化能を高める料理の最適条件を検討した。抗酸化能測定は,化学発光法を用いてペルオキシラジカル捕捉活性をIC50値で評価した。
     その結果,主食ではクルミ添加米粉パンが,汁物ではスライス肉に香辛料を加え加熱中にアク抜き処理操作をしたストックが,主菜ではアジのソテーのトマトソースがけが,付け合わせはキタアカリ種に生パセリ添加ジャガイモ料理が,副菜1ではゴマ油ドレッシング使用が,副菜2ではブルーベリーソースがけが抗酸化能を高める料理であった。これら抗酸化能の高い料理を組み合わせたモデル献立そのものについて抗酸化能を測定した結果,基本献立に比べて抗酸化能が有意に高くなり,理想的な洋食献立として提案できることが示唆された。
  • 遠藤 瑶子, 今泉 有喜, 香西 みどり
    2012 年 45 巻 6 号 p. 403-412
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
     水温上昇速度1.5~20℃/minで加熱する場合もしくは沸騰水加熱におけるジャガイモの内部温度および硬さの変化をプログラム計算により予測し,最適加熱時間を算出した。計算の結果,沸騰のみで加熱を行った場合に比べて,水温上昇期を利用することで適度な硬さとするための沸騰継続時間が短縮され,試料形状の違いによる沸騰継続時間の差も小さくなった。水温上昇速度が3℃/minよりも緩慢になると硬化の影響が大きくなり,沸騰継続時間は長くなった。水温上昇が1.5℃/minと緩慢な加熱,もしくは95℃一定温度での加熱により試料内部の硬さは均一となり,煮くずれしにくいことがシミュレーションにより示された。5段階評点法による官能評価を行ったところ,1.5℃/minでの加熱により調製した試料よりも煮くずれがほとんどないと評価された。
  • 長尾 慶子, 水 珠子, 宮下 朋子, 松本 幸雄
    2012 年 45 巻 6 号 p. 413-421
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
     これまでに実施してきた種々の保形性食材を加熱した際に見られる食材内部の熱移動に関する実験研究の結果と対比させながら,今回の冷却に関する研究においては各種の食材冷却時におけるその内部熱移動を観測し,それを現象論的に記述することを試みた。すなわち,食材を一定温度にまで冷却する操作を開始した直後に見られる試料温度の急激な低下は比較的急速に緩慢になり,やがて徐々に収束するようになる。このような状況は,試料の温度が一定になるまで続く。また,この現象は被検食材内部における伝導伝熱によって現われ,食材の種類,水分量,成分の相転移現象,あるいは冷却温度範囲等には影響されない。故に,食材の冷却現象は食材に内在する熱エネルギーの緩和現象として,その時間定数である緩和時間を用いて束一的に取り扱い得る。
  • 遠藤 瑶子, 渥美 恵理, 香西 みどり
    2012 年 45 巻 6 号 p. 422-428
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
     ダイコン,ニンジン,ジャガイモの1~3cm角を20℃,0.8~2.0% NaCl水溶液に浸漬した時の試料内部の食塩濃度分布の経時変化をプログラム計算により算出した。プログラムは三次元熱伝導および拡散解析に基づく差分法を用い,Visual Basic(Microsoft)により作成した。水から加熱し余熱を利用して適度な硬さとしたものを試料とした。計算により試料全体の平均濃度が0.6~0.9%になる時間を求め,実際に試料を調製し,塩味の濃さについて-2から+2の5段階評点法で官能評価を行った。官能評価の結果,0.8~1.5% NaCl水溶液浸漬時の試料全体の平均濃度が0.7%であれば,野菜の種類やサイズによらず適度な食塩濃度であった。2.0% NaCl水溶液では試料断面の食塩濃度分布から表面付近が濃すぎて適度な状態が得られなかった。加熱時の調味時間はそれぞれジャガイモ>ニンジン>ダイコンの順に長かった。
資料
  • 露口 小百合, 山口 智子, 高村 仁知, 的場 輝佳
    2012 年 45 巻 6 号 p. 429-437
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
     鶏肉のラジカル捕捉活性について,ブロイラー(モモ・ムネ・ササミ・手羽元・皮・肝臓・砂肝),地鶏肉(モモ・ムネ・ササミ・手羽元・皮・肝臓・砂肝)およびハーブ鶏肉(モモ・ムネ)の三種を測定し,それらの抗酸化成分について検討した。鶏肉中のラジカル捕捉活性はDPPH-HPLC法とデオキシグアノシン酸化法を用いて測定した。鶏肉中の活性成分としては,アスコルビン酸とトコフェロールと総ポリフェノール,さらにグルタチオンについても検討した。鶏肉の全部位において,いずれもラジカル捕捉活性を示し,特に肝臓は高い活性を示した。ハーブ鶏肉や地鶏については,ムネのラジカル捕捉活性がブロイラーと比較して有意に高かった。ラジカル捕捉活性の成分は,グルタチオンが少量,アスコルビン酸,トコフェロールについてはほとんど含まれなかったが,ハーブ鶏肉では,モモ,ムネにおいてポリフェノールがブロイラーと比較して有意に高く,ハーブの食餌による影響が示唆された。以上の結果より,鶏の生体内へのハーブ摂取の効果が期待される。
  • 飯島 久美子, 川杉 まい, 藤井 義晴, 香西 みどり
    2012 年 45 巻 6 号 p. 438-446
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
     最適調理条件(90℃ 3~4時間の浸漬後に40分間茹でる)におけるムクナ属マメの成分変化と,煎り豆,水さらし豆粉と餡のL-DOPA量を測定した。皮剥き茹で豆は炭水化物,タンパク質,カルシウムや不溶性食物繊維が皮剥き豆の80%以上と高い割合で残存し,一方,L-DOPAは残存率が皮剥き豆の30%以下と最も低かった。皮付き煎り豆の適度な焙煎条件は170℃20~30分間あるいは190℃ 10~20分間であり,その時のL-DOPA量は皮剥き豆の45~67%であった。全豆粉のL-DOPA 量は水晒し7回で,生餡のL-DOPA量は水晒し3回でほぼ0になった。このように様々な調理条件と豆のL-DOPA量の関係を数量的に把握したことによりL-DOPAのコントロールが可能となったことを明らかにした。
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