日本調理科学会誌
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状態が異なる油脂を添加したマッシュポテトの咀嚼過程における食塊の性状の変化について
大須賀 彰子岩崎 裕子高橋 智子大越 ひろ
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2013 年 46 巻 3 号 p. 205-212

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抄録
 本研究では,状態が異なる油脂を添加したマッシュポテト試料の飲み込み特性が二極化する要因を把握するために,咀嚼過程における食塊の性状の変化について検討を行った。その結果,食塊の硬さ,降伏応力および水平方向の抵抗力は液体添加試料の食塊(BPWとBPO)が固体添加試料の食塊(BPFとBPS)に比べて,有意に低値を示し,二極化の傾向を示した。また,液体添加試料は,咀嚼5回で,唾液と混合され,嚥下可能な食塊に近い状態になっているが,固体添加試料では,10回以上の咀嚼が必要であること示唆された。食塊中の油脂の分散を顕微鏡で観察したところ,液状油O添加試料の食塊(BPO)では咀嚼5回以上でじゃがいも細胞間に細粒化された油滴がみられたのに対し,固体添加試料の食塊(BPFとBPS)では咀嚼10回以上で水層(じゃがいも細胞層)と油脂層(固形脂層)に分離しているのが確認された。このことより,飲み込み特性が二極化する要因は,咀嚼過程における試料と唾液の混合のしやすさと食塊中に分散する油脂の状態であることが示唆された。
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© 2013 一般社団法人日本調理科学会
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