日本調理科学会誌
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46 巻, 3 号
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総説
報文
  • 宮下 朋子, 原田 和樹, 長尾 慶子
    2013 年46 巻3 号 p. 153-160
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     福島産の粘りの強い自然薯を用いて,撹拌時間を変え含有気泡量を変えた各試料を米粉に加えた蒸しパン製品を調製し,製品中に分散する気泡の状態が蒸しパンの品質に及ぼす影響について検討した。次いでこれらの自然薯蒸しパンから粥を調製し,嚥下困難者用食品としての利用適性を検討した。その結果,加熱前自然薯蒸しパン試料のみかけ密度は,撹拌時間10分までは減少し,膨化が大となった。自然薯蒸しパンから調製した粥試料の官能評価では,撹拌時間8分の製品が,味,総合評価で好まれる傾向にあった。抗酸化能の指標の一つであるORAC値は,生自然薯皮付きで361(μmol TE/100 g),自然薯蒸しパンは76,蒸しパン粥は25であった。副材料を工夫することで抗酸化能も嗜好性も好まれる製品になることが期待できる。
  • 鈴野 弘子, 石田 裕
    2013 年46 巻3 号 p. 161-169
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     牛肉,鶏肉,じゃがいもを硬度の異なる水で水煮して,煮汁のミネラル成分含有量,破断強度測定,組織構造の観察,官能評価を行い,水の硬度が煮込み料理に及ぼす影響を調べた。硬水で牛肉,鶏肉,じゃがいもを水煮したところ,水中のCa,Mgがこれらに吸着した。KとNaは,軟水より硬水で多く溶出した。破断強度値は,牛肉ではエビアンを用いて120分水煮したものが有意に小さく,じゃがいもは硬水ほど大きくなった。エビアンで水煮した牛肉は,筋内膜および筋周膜と,筋線維束の分離が顕著であった。じゃがいもは,硬水で水煮するとでん粉の糊化が抑制され,細胞同士が凝集した組織構造になった。エビアンで水煮すると,肉はやわらかくなり,じゃがいもは軟水より硬くなったことから煮崩れが防げると推測でき,肉や野菜も食する煮込み料理には,ある程度(硬度300程度)の硬度の水が適することが示された。
  • 高橋 智子, 岩崎 裕子, 大越 ひろ
    2013 年46 巻3 号 p. 170-178
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,食物繊維ハイドロコロイドであるコンニャクグルコマンナンと増粘多糖類を主な原材料とする市販ゲル化剤を添加した粥について,その力学的特性と食べやすさの関係について検討した。食べやすさの評価は官能評価の手法に加え,咀嚼および嚥下時筋電位測定を用いて検討をした。粥にゲル化剤を添加することで,官能評価結果より口中でべたつき感は少なく,食塊としてまとまりやすくなると評価された。また,ゲル化剤添加粥は調製後経過時間が長くなり品温が低下することで,テクスチャー特性の硬さは顕著に硬くなり,また粥飯一粒の破断荷重は大きくなった。市販ゲル化剤を添加した粥は,品温が低下することで,咀嚼が困難となり,口腔から咽頭へ食塊を送り込む際に使用する舌骨上筋群筋の筋活動時間も延長することが示された。
  • 廣田 智子, 吉田 晋弥, 永井 耕介
    2013 年46 巻3 号 p. 179-187
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     黒ダイズ‘丹波黒’を用いて,高温での浸漬処理が吸水特性,煮豆の破断特性,官能評価,成分に及ぼす影響について調査し,効率的な煮豆調製法について検討した。浸漬条件は,20℃では1,2,5,10,15,20時間,高温(30℃から80℃までの6温度区)では2時間保持した。2時間の浸漬では,浸漬温度が高くなるにつれて重量増加比は高く,煮豆の破断荷重は低くなり,60℃以上の浸漬温度で平衡状態に達した。溶出固形物量は,70℃以上では顕著に増加した。裂皮率は,標準浸漬条件(20℃,10時間)に比べて,60℃以上の浸漬温度で低く抑えられた。高温での2時間の浸漬条件において,標準浸漬条件と同等の官能評価値及びスクロース,遊離アミノ酸含量が得られる至適浸漬温度は60℃であった。以上のことから,高温での短時間(2時間)の浸漬処理法として,60℃浸漬が利用できると考えられる。この浸漬方法は,浸漬時間の大幅な短縮及び裂皮率の減少が図れることから,煮豆の調理・加工の面においても有用性があると考えられる。
  • 粟津原 元子, 田中 佐知, 早瀬 明子, 香西 みどり
    2013 年46 巻3 号 p. 188-195
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     鶏肉の加熱中のうまみ成分の変化を明らかにすることを目的とし,鶏ももミンチ肉を緩慢加熱(オーブン(O)210℃,35分),急速加熱(電子レンジ(M)500 W,7分),4種類の組合せ加熱(M 3分+O 30分,M 4分+O 25分,M 5分+O 20分,M 6分+O 15分)で加熱し,加熱中の温度履歴と鶏肉のうまみ成分との関係を検討した。5'-IMP量は,緩慢加熱の時間が短い条件ほどその減少は抑制されうまみの保持に効果があった。グルタミン酸及び総遊離アミノ酸量は加熱条件による顕著な違いは見られなかったものの,緩慢加熱の時間が長い条件では分子量約18,000のペプチドの消失が見られ,タンパク質やペプチドの分解により生じた低分子ペプチドによりうまみが増加している可能性が示唆された。以上の結果から,加熱条件によって5'-IMP,グルタミン酸,ペプチドの量が異なり,加熱条件を組み合わせることにより,よりうまみの強い焼上がりにできる可能性が示された。
  • 高橋 智子, 河村 彩乃, 大越 ひろ
    2013 年46 巻3 号 p. 196-204
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,アミロース含有率の異なる高アミロース米,中アミロース米,低アミロース米,もち米を材料米とし,米重量に対して一定の加水量で調製した粥試料の力学的特性と官能評価,咀嚼時の咬筋筋電位の関係を検討した。その結果,粥飯塊のテクスチャー特性で硬く,凝集性が小さい,また,粥飯粒のひずみ-荷重曲線より,低ひずみ領域における荷重が顕著に大きい高アミロース米粥試料は,他の3種類の粥試料よりも,有意に咀嚼時にかたく,口中でべたつかず,まとまりにくいと評価された。また,咀嚼開始から嚥下開始までの咀嚼時筋電位測定では,咀嚼回数,総筋活動量は,硬い高アミロース米粥試料のほうが,軟らかいもち米粥試料よりも大きい傾向を示した。しかし,総筋活動量が少ないもち米粥試料の咀嚼動作1回の平均筋活動量,平均振幅は,高アミロース米試料よりも有意に大きな値を示した。
  • 大須賀 彰子, 岩崎 裕子, 高橋 智子, 大越 ひろ
    2013 年46 巻3 号 p. 205-212
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,状態が異なる油脂を添加したマッシュポテト試料の飲み込み特性が二極化する要因を把握するために,咀嚼過程における食塊の性状の変化について検討を行った。その結果,食塊の硬さ,降伏応力および水平方向の抵抗力は液体添加試料の食塊(BPWとBPO)が固体添加試料の食塊(BPFとBPS)に比べて,有意に低値を示し,二極化の傾向を示した。また,液体添加試料は,咀嚼5回で,唾液と混合され,嚥下可能な食塊に近い状態になっているが,固体添加試料では,10回以上の咀嚼が必要であること示唆された。食塊中の油脂の分散を顕微鏡で観察したところ,液状油O添加試料の食塊(BPO)では咀嚼5回以上でじゃがいも細胞間に細粒化された油滴がみられたのに対し,固体添加試料の食塊(BPFとBPS)では咀嚼10回以上で水層(じゃがいも細胞層)と油脂層(固形脂層)に分離しているのが確認された。このことより,飲み込み特性が二極化する要因は,咀嚼過程における試料と唾液の混合のしやすさと食塊中に分散する油脂の状態であることが示唆された。
ノート
  • 水間 智哉
    2013 年46 巻3 号 p. 213-220
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     酒米の炊飯特性について,代表的な酒米品種の山田錦と食用米品種のコシヒカリを比較検討することによって,以下のことを明らかにした。(1)酒米に特異的に一定の割合で混在する心白米(心白構造を持つ米粒)は,通常形態の無白米(心白構造を持たない米粒)と吸水速度が異なるため,炊きムラが生じやすい。これを防止するには十分な浸漬時間が必要であると考えられた。(2)山田錦はコシヒカリに比較して,少ない白米で多くの炊飯米ができ,「釜増え」が大きかった。官能評価結果より,山田錦は,コシヒカリと同程度の良食味性を有することが明らかとなった。(3)山田錦の炊飯米はコシヒカリとは異なる新しい物性特性(硬くてこしが強いが,粘性は低い)を持つことがわかった。今後は,食感の違いをいかした調理面での応用も期待される。(4)これらの特性には,山田錦の高いアミロース含量や酒米固有の心白構造及び大粒性が関与していると推察された。
  • 肥後 温子, 寺本 あい, 富永 暁子, 井部 奈生子
    2013 年46 巻3 号 p. 221-230
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     水,バッター生地,食パンを試料とし,スチームコンべクションオーブンの7種類の加熱モードを用いて加熱速度,消費エネルギー量,力学特性を比較した。(1)水温上昇速度,バッター生地の凝固速度,食パンの焦げ速度とも熱風モードに比べてスチームを併用したコンビモードの方が速くなった。(2)180℃の熱風モードを基準とした単位時間当たりの消費電力量は,280℃熱風では1.87倍となり,コンビモード(スチーム100%)では3.62倍(180℃),3.95(280℃)倍となった。(3)180℃の熱風モードを基準とした水,バッター生地加熱時の消費電力量は,280℃熱風では1.37~1.44倍となり,コンビモード(スチーム100%)では2.41~3.01倍となった。(4)食パンの焦げ速度は,庫内温度を180℃から280℃に上げると6倍以上となり,一定の焦げ色にするための消費電力量は庫内温度180℃の1/2以下となった。(5)熱風モードでは加熱時間が長くなると乾燥して硬くなる傾向があるが,コンビモードでは食パンの力学特性の変化が速いにもかかわらず長時間加熱しても硬化が少なかった。
  • 赤石 記子, 舛田 美和, 岩田 力, 長尾 慶子
    2013 年46 巻3 号 p. 231-235
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究では小麦粉製品として代表的なパンとソースを取り上げ,小麦アレルギー患者でも食べられる調理条件を追究した。市販キット(FASPEK)を使用し,抗原量を測定し,低アレルゲン化の指標とした。パンの調製条件は一般的に使用されているドライイーストを対照に,米麹,ヨーグルトをスターターとして得られる発酵液を小麦粉に加え,パンを調製した。ソースの調製条件はルウの加熱温度を非加熱,120℃,160℃,210℃とした。その結果,ドライイーストパンに比べヨーグルト発酵液を用いて中種法で調製したパンで抗原量は有意に低下した。ルウの調製条件を変えたソースではブールマニエ(非加熱試料)に比べブラウンソース(210℃加熱試料)で抗原量は有意に低下していた。スペルト小麦で調製したブラウンソースが特に低値を示した。
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