抄録
京の伝統野菜の一つであるエビイモは,旬が短く,常温や冷蔵での長期保存は難しく,旬の時期しか食べることができないのが現状である。そこで我々は急速凍結法の一つであるブライン凍結法に着目し,凍結時の電圧付与の有無および凍結前のブランチング処理条件に焦点を当て,エビイモの長期保存の可能性について検討を行った。未処理のエビイモと比較して,解凍・加熱時に煮汁中に溶出した糖量はブランチング後に凍結したものの方が有意に(p<0.05)少なかった。また,5分ブランチング後に高電圧ブライン凍結したものが最も組織損傷が少なく,未処理のエビイモに近い破断特性を示し,官能検査においても軟らかく粘り気があると有意に評価され(p<0.05),えぐみがなくおいしいと総合的にも好まれる傾向が認められたことから,エビイモの場合,5分ブランチングし,8割程度加熱された状態で高電圧ブライン凍結することで,品質をより良い状態で保持したまま長期保存できる可能性が示された。