岡山後楽園の江戸時代の記録『御後園諸事留帳』から,すしの種類と内訳を抽出した。この結果,すしに関する386件の記録が確認された。この記録には,散しずし,ばらずし,巻ずし,海苔巻などの多様なすしが20種類載っていた。
すしと記録された中には,散しずしに類似したすしも含まれていた。巻ずしと海苔巻とは使用具材で名称が異なったすしであり,海苔巻の使用具材は1種類であった。
提供先によりすしの呼び名を変えていた場合もみられた。たとえば,散しずしをばらずしや酢飯と呼んだ場合もみられた。また,すしの種類によって身分差を考慮して提供先を変えている傾向も読み取れた。
伝承では,岡山での散しずしの発祥は16世紀の中頃とされている。『御後園諸事留帳』では,散しすしとばらずしは19世紀半ばに記録がみられた。その詳細な年代は散しずしでは1843年,ばらずしは1855年であった。