日本調理科学会誌
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料理の盛り付けにおける青みの配置が見た目のおいしさに及ぼす影響
―評価グリッド法を用いた評価要因の構造化―
伊藤 有紀
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2025 年 58 巻 1 号 p. 32-44

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抄録

 食べ物の食器への配置の仕方,すなわち盛り付けは量の見え方や見た目のおいしさに影響を与える。しかし,盛り付けは複雑な外観特性と固有の食文化の様式を備えているため,好ましい盛り付けの一般化は難しく,評価法は確立されていない。また盛り付けの評価要因も詳らかにされていない。そこで本研究では盛り付けの評価要因やその構造を明らかにする目的で評価グリッド法の適用を試みた。評価グリッド法は,インタビューで得られた発言をもとにし,評価における階層的な情報処理メカニズムを仮定し,その分析を行う手法である。本研究では食経験などの人側の要因が盛り付けの印象や最終的な評価に影響を与える評価構造を仮定し,検証を行った。家庭で食べる料理を対象に,配置の違いが認識しやすい鮮やかな緑色の野菜(青み)に着目し,青みの配置と印象,おいしさの感じ方の関係性を調べた。筑前煮など4種類の料理について各5パターンの異なる青みの配置を行った盛り付けの写真を用いて調理師など15人に評価させた。発言内容を分析した結果,「当該料理やその盛り付けに対する認識」や「調理法や盛り付け手順などとのつながり」など9つの評価要因が抽出された。また,和食の煮物の盛り付けでは青みを置いて中央を高くして盛り付けるとよいなどの認知が働き,その認知が和食らしい印象につながり,おいしそうと評価されるなど,認知と印象と評価の間に評価構造の存在が認められた。以上より評価グリッド法を,料理をよりおいしそうに感じさせる盛り付けの提案に応用できる可能性が示された。本研究の知見を発展させることで飲食店や給食施設などでの活用が見込まれる。

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