日本調理科学会誌
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58 巻, 1 号
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総説
報文
  • 平島 円, 奥野 美咲, 篠谷 晴香, 上村 真子, 高橋 亮, 西成 勝好
    原稿種別: 報文
    2025 年58 巻1 号 p. 7-15
    発行日: 2025/02/05
    公開日: 2025/02/06
    ジャーナル 認証あり

     コーンスターチの調理科学的特性に対する高pHの影響について調べるため,緩衝液を用いてアルカリ性に調整したコーンスターチの諸特性について静的および動的粘弾性測定,DSC測定,顕微鏡観察,還元糖量の測定および色差測定により検討した。pHが12程度までは,3.00 wt%コーンスターチ糊液の粘度や粘弾性に大きな変化がなかった。また,糊化温度や糊化エンタルピーにも大きな変化はなかった。しかし,pH 9程度を超えるとアミロース鎖やアミロペクチン鎖の加水分解が起こり,pH 11程度を超えると澱粉粒子内の結晶構造が破壊された。その影響を受け,pH 12を超える強アルカリ性では,澱粉の糊化が起こりやすくなり,pHが13程度までは,澱粉糊液の粘弾性が高くなった。一方,pHが13を超える強アルカリ性では多くのアミロース鎖やアミロペクチン鎖が加水分解され,長さが短くなったことから,コーンスターチ糊液の粘弾性は低下した。

ノート
  • 沢村 正義, 芦澤 穂波, 西山 葵奈, 木下 彰二, 北岡 雄一
    原稿種別: ノート
    2025 年58 巻1 号 p. 16-22
    発行日: 2025/02/05
    公開日: 2025/02/06
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,和紅茶(あうん),国内製造紅茶(日東),英国産紅茶(トワイニング)の3種類のアールグレイ紅茶を用いて,茶葉の抽出時間の機能性成分に及ぼす影響を追究したものである。一般的な紅茶の淹れ方として,茶葉 3 g,熱湯 250 mL,抽出時間3分を基準とした。抽出時間を3,5,7,10,15分とし,それぞれについて,テアフラビン類,カフェイン,SOD様活性について測定した。その結果,抽出時間10分でほぼ成分の浸出は完了することが明らかとなった。テアフラビン量は3分間抽出に比べて10分間抽出で約1.5倍増加した。カフェイン量,SOD活性も同様の傾向を示した。機能性を重視し,渋みを軽減したアールグレイ紅茶の飲み方として,10分間抽出後,牛乳または豆乳の添加によるミルク紅茶がふさわしいことが示唆された。

  • 中川 裕子, 高橋 智子, 大越 ひろ, 守田 和弘
    原稿種別: ノート
    2025 年58 巻1 号 p. 23-31
    発行日: 2025/02/05
    公開日: 2025/02/06
    ジャーナル 認証あり

     炊飯前磨砕処理により調製した米素材について,咀嚼嚥下機能が低下した人の主食としての可能性を検討した。粥および粥ペーストとテクスチャー特性の比較を行い,官能評価および咬筋の筋活動測定により食べやすさを評価した。

     材料は白米および玄米を使用した。米素材の調製方法は米を浸漬した後,浸漬水と米をミキサーで磨砕し,磨砕液を炊飯した。粥および粥ペーストは米素材と加水量をそろえて調製した。

     調製した米素材は,白米・玄米いずれも均質なゲル状で,粥と粥ペーストの中間の硬さ,付着性,凝集性を示した。官能評価の結果,米素材は,粥・粥ペーストと比較してまとまりやすく,べたつき感は粥ペーストよりも少ないと評価された。特に玄米の米素材は,筋活動測定の結果,嚥下までに要した時間・筋活動量・平均最大振幅が低値で食べやすい形態であることが示された。摂食機能に合わせた食形態の主食として有用であることが示された。

資料
  • ―評価グリッド法を用いた評価要因の構造化―
    伊藤 有紀
    原稿種別: 資料
    2025 年58 巻1 号 p. 32-44
    発行日: 2025/02/05
    公開日: 2025/02/06
    ジャーナル 認証あり

     食べ物の食器への配置の仕方,すなわち盛り付けは量の見え方や見た目のおいしさに影響を与える。しかし,盛り付けは複雑な外観特性と固有の食文化の様式を備えているため,好ましい盛り付けの一般化は難しく,評価法は確立されていない。また盛り付けの評価要因も詳らかにされていない。そこで本研究では盛り付けの評価要因やその構造を明らかにする目的で評価グリッド法の適用を試みた。評価グリッド法は,インタビューで得られた発言をもとにし,評価における階層的な情報処理メカニズムを仮定し,その分析を行う手法である。本研究では食経験などの人側の要因が盛り付けの印象や最終的な評価に影響を与える評価構造を仮定し,検証を行った。家庭で食べる料理を対象に,配置の違いが認識しやすい鮮やかな緑色の野菜(青み)に着目し,青みの配置と印象,おいしさの感じ方の関係性を調べた。筑前煮など4種類の料理について各5パターンの異なる青みの配置を行った盛り付けの写真を用いて調理師など15人に評価させた。発言内容を分析した結果,「当該料理やその盛り付けに対する認識」や「調理法や盛り付け手順などとのつながり」など9つの評価要因が抽出された。また,和食の煮物の盛り付けでは青みを置いて中央を高くして盛り付けるとよいなどの認知が働き,その認知が和食らしい印象につながり,おいしそうと評価されるなど,認知と印象と評価の間に評価構造の存在が認められた。以上より評価グリッド法を,料理をよりおいしそうに感じさせる盛り付けの提案に応用できる可能性が示された。本研究の知見を発展させることで飲食店や給食施設などでの活用が見込まれる。

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