抄録
従来用いてきた小麦粉系の食材モデルに代わり,その小麦粉を小麦でん粉で100%置換したモデル系を調製し,加熱中の伝熱特性について検討を行い,得られた結果を以下にまとめた. 1.これまでの小麦粉系モデルと同様に熱伝導率,比熱容量および密度の実測値から算出した熱拡散率α と,温度上昇曲線より求めた遅延時間定数数の逆数は,モデル系の水分量増加につれて上昇する傾向が見られ,これら系の伝熱特性に水分含量が大きく関与していることがあらためて確認された. 2.DSC測定で見られるようなでん粉糊化に伴う吸熱反応が今回のでん粉系モデルの一次元加熱による温度上昇曲線では観察されなかった. これにはモデル系中の成分間での相互作用や測定方法が関与していると推察されるが今後の検討が必要である. 3.これまでの小麦粉系モデルと同様,今回のでん粉系モデルにおいても,熱拡散率(α)と熱移動速度に対応する遅延時間定数の逆数(1/τx)との関係が S/τx=k・αnのべき関係式で示されることが確認された. 4.上式の係数kおよびべき指数nは食材内部の距離xが増すにつれ小さくなり,一定の関係式で表わされることが示唆された. 本研究を行うにあたり種々の御教示を賜りました大阪府立大学名誉教授松本幸雄先生に厚く御礼申し上げます.