日本調理科学会誌
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アルコール添加量がゼラチン溶液のゲル化に及ぼす影響
永塚 規衣大野 隆司大川 佑輔松下 和弘仁科 正実峯木 眞知子長尾 慶子
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2004 年 37 巻 4 号 p. 360-365

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抄録

煮こごりを始めとするゼラチン料理に加えられるアルコール量のゲル化に及ぼす影響をみるために低濃度から高濃度(1%,3%,5%,10%,20%)まで変化させたアルコール添加ゲルを調製し, 動粘度モニタリングシステム, 旋光度, 動的粘弾性, レオメーターによる力学特性及び170-NMRのスピンー格子緩和時間(T1)の測定, 電子顕微鏡によるゲル内部の組織観察を行い, 得られた結果を以下にまとめた. (1)アルコール添加濃度が高濃度になるほどゼラチン分子のゲル化特性(ゲル化温度, 旋光度, 粘性率及び弾性率の低下)に影響を及ぼし, 初期の架橋形成も遅れることが示唆された. つまり, 高濃度のアルコール添加はゲル化が阻害されることが明らかとなった. (2)10%以上の高濃度アルコール添加ゲルの物性は, 表面はゴム状の延性的性状を有したが, (1)の結果から内部は網目構造の少ない口どけの早いゲルを形成すると推測された. (3)ゾルのNMR測定及びゲル内部の組織観察から, 10%以上の高濃度アルコール添加はアルコールと溶媒の水との相互作用により, ゼラチン分子の網目形成が阻害され, ネットワークの少なく組織構造の変化したゲルを形成することが認められた.

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