カウンセリング研究
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原著
小学生の母子保健室登校による母親の心理的変容モデルの構築
―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる仮説モデルの生成―
藤井 茂子濱口 佳和
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2010 年 43 巻 2 号 p. 103-113

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抄録

本研究の目的は,母子保健室登校の経験によって生じる母親の心理的成長についての仮説的モデルを提供することである。子どもが小学校時期に母子保健室登校を経験した17人の母親を対象に半構造化面接を実施した。面接によって得られた逐語記録を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析した結果,4カテゴリーグループ,19カテゴリー,58概念が抽出された。選択的コーディングにより,母子保健室登校による母親の心理的変化はプレ母子保健室登校期,母子保健室登校継続期,ポスト母子保健室登校期の3期に分かれること,各時期の母親の思考・感情・行為にはそれぞれ固有の変化が生じることが明らかにされた。一般的な不登校児の母親の心理的変化に比べると,母子保健室登校を経験した母親は,学校での子どもの行動の観察経験と養護教諭との相互作用経験を強く反映した変化が生じ,母親の子どもの理解や受容,具体的な対応の改善がなされ,母親の心理的成長や良好な保護者と学校との関係の構築をもたらす可能性が高いことが明らかにされた。

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© 2010 日本カウンセリング学会
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