2010 年 43 巻 2 号 p. 93-102
本研究は,(1)喉頭摘出者の適応の個人差を測定する尺度を開発し,(2)喉頭摘出者の心理社会的適応と自己肯定意識および否定的感情との関連の検討を行い,(3)心理社会的適応の観点から喉頭摘出者の類型を求め,類型による心理的特徴の差を検討することを目的とした。喉頭摘出者503名を対象に,心理社会的適応尺度原版,自己肯定意識尺度,不安・うつ尺度,怒り喚起・持続尺度を使用し調査を行った。因子分析の結果,喉頭摘出者の心理社会的適応として,「再適応への努力(α=.88)」「日常生活の享受(α=.81)」「低対人過敏性(α=.83)」の3因子が抽出され,それぞれ高い内的一貫性が確認された。次に,喉頭摘出者の心理社会的適応3側面と精神的健康状態との関連を検討した結果,特に自己肯定意識と否定的感情すべての項目に心理社会的適応の「低対人過敏性」の側面が高い寄与を示していることが明らかとなった。また,心理社会的適応3側面の特徴からクラスター分析を行った結果,5群に分かれることが明らかとなり,その心理的特徴と心理的支援の方向性について考察した。