2013 年 46 巻 1 号 p. 18-25
カウンセラーの自己開示が心理臨床場面において有用な効果をもつか否かについては,賛否両論がある。本研究ではカウンセラーの自己開示を,Self-involvingと,Self-disclosingの2種類に分け,対象者のカウンセラーに対する印象評価に与える効果に違いがあるか否かを検討した。その方法として,大学生,大学院生208名を対象とし,対象者をSelf-involving群,Self-disclosing群,統制群の3群にふり分け,カウンセリング場面の逐語を読んでもらい,その逐語のカウンセラーに対する印象の評価を質問紙で尋ねた。各群の効果の違いをみるため分散分析を行った結果,Self-involvingは,カウンセラーに対する好意感と専門性を高く評価させる効果があることが見いだされた。一方,Self-disclosingは,カウンセラーに対する好意感を高める効果と,信頼感を抑制する効果があることが見いだされた。本研究の結果から,Self-involvingは被開示者にカウンセラーの専門性を印象づけることを促進させる有用な効果をもつことが示唆された。一方,Self-disclosingは被開示者にカウンセラーへの好意感を促進させる有用な効果をもつことが示唆された。しかし,Self-disclosingはカウンセラーへの信頼を抑制することも示唆された。