抄録
本研究では,若年就業者において「キャリア探索の停滞」「所属組織からの低い評価」「友人・知人のキャリアとの上方比較」「ワークライフバランスの欠如」という状況におけるあせりやすさが,「切迫感」「キャリア構築への衝動」「キャリアの懸念」というキャリア焦燥感を介して,離転職意思へとつながるという仮説モデルに従い検討した。20代の就業者256名を対象としたインターネット調査を実施し,共分散構造分析を行った。その結果,(1)「キャリア探索の停滞」「友人・知人のキャリアとの上方比較」「ワークライフバランスの欠如」が「切迫感」を介して離転職意思につながっていること,(2)「所属組織からの低い評価」「友人・知人のキャリアとの上方比較」「ワークライフバランスの欠如」が「キャリア構築への衝動」を促していること,(3)「キャリア探索の停滞」が「キャリアの懸念」を促していることが明らかとなった。以上より,キャリア焦燥感のネガティブな側面である「切迫感」のみが離転職意思を促すという新たな知見が得られた。