カウンセリング研究
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ケース報告
“確認行為をゼロにできない”職種の強迫性障害に対する社会性機能の向上を取り入れた認知行動療法
銅島 裕子
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ジャーナル 認証あり

2018 年 51 巻 1 号 p. 63-71

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抄録

本症例は確認行為がやめられない強迫性障害のクライエントに対して,認知行動療法を行った。 クライエントは確認をする業務が主である職業に就いていたため,確認回数を常識的に残したいという本人の希望に沿って治療が進められた。面接の形式は約1年,全25回,1回50分の個人面接とした。認知行動療法のおもな介入技法として,確認行為には曝露反応妨害法を,否定的な認知には認知再構成法を,緊張緩和には呼吸法,自律訓練法など標準的な技法を活用した。しかし,曝露反応妨害法の“確認をゼロにする”という治療原理に本人の職業的責務が合わなかったため,職場や家族間の対人コミュニケーションの促進,運動などの多種の気晴らしコーピングを活用し,クライエントの生活の質が高まるよう社会性機能の視点からも治療を工夫し,確認行為を減らすことを目指した。検査としてY-BOCS(強迫性度)およびBDI-Ⅱ(うつ度)の心理尺度を用いて,治療前と治療後で検査得点の差の変化で効果をみた。結果,Y-BOCS 得点は17→12,BDI-Ⅱ得点は11→6 に下がった。本人の望む業務上必要な確認回数で治療を終結とした。

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© 2018 日本カウンセリング学会
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