カウンセリング研究
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70代ゲイ男性のナラティヴと時代背景
田中 将司
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2020 年 53 巻 1 号 p. 39-51

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抄録

性指向でマイノリティの当事者へのカウンセリングでは,これまで性指向アイデンティティ発達モデルを援用し理解されることが多かった。しかし,他者との関係,社会歴史的文脈,アイデンティティの交差性などから,そのようなモデルでは必ずしも理解に至らなかった。本邦でも,例えば単一事例のナラティヴ研究から多様な理解が試みられているが,高齢期の当事者の研究はほとんどみられない。本研究では,70代ゲイ男性Aへのインタビューを対象ナラティヴとし,当事者がどのように人生を意味づけているか,個別性を重視して理解することを目的に研究を行った。分析にはシークエンス分析を参考にした方法を用いた。Aの場合,性指向へのネガティヴな語りの中にポジティヴな評価や態度の語りが混在したことが特徴的であった。例えば,『アウトロー』な生き方であること,カミングアウトするかしないかの『ドキドキ』を面白がっていることを語った。高齢であることなど,他のアイデンティティとの交差性が影響として考えられたが,『学生運動』『エイズパニック』といった本邦の時代背景に特に大きく影響を受けていたように思われた。

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© 2020 日本カウンセリング学会
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