カウンセリング研究
Online ISSN : 2186-4594
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53 巻, 1 号
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原著
  • 本田 真大, 永井 智
    原稿種別: 原著
    2020 年 53 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は援助要請の最適性の頻度および最適性と被援助志向性の関連を検討することである。青年618名,成人824名を対象としたウェブ調査を実施した。その結果,援助要請の過剰性の割合は過少性の割合よりも低いこと,被援助志向性の「被援助に対する期待感」は過剰型,自立型の援助要請スタイルと関連すること,「被援助に対する抵抗感」は回避型の援助要請スタイルと関連することが明らかになった。

  • 藤原 健志, 濱口 佳和
    原稿種別: 原著
    2020 年 53 巻 1 号 p. 12-25
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,(1)聴くスキル尺度をより少数の項目で測定する尺度を開発し,(2)これを用いて聴くスキルと主張スキル,全般的社会的スキルの因果関係を明らかにするとともに,(3)3つのスキルと適応感の関連を明らかにすること,の3点であった。まず聴くスキルについては,先行研究で作成された尺度項目から約6割の項目を採用し,確認的因子分析を行った。その結果,短縮版尺度は原版尺度同様の因子構造が再現され,各下位尺度についても十分な信頼性を有することが確認された。また,スキル間の関連では,新入生において,春時点の聴くスキルの高さが秋時点の他スキルの高さを予測していた。一方,上級生においては,KiSS-18で測定された春時点の全般的社会的スキルが秋時点の聴くスキルや主張スキルに対して正の影響を有する傾向にあった。適応感に対しては,おもに主張スキルが,その後の学校生活における満足感や知覚されたソーシャル・サポートに対して影響を与えることが示された。一方,聴くスキルや全般的社会的スキルは,主として上級生において,これら適応感と関連をもつようになることが示された。各スキル間の学年をまたいだ影響や,スキル訓練に対する示唆について考察された。

資料
  • 松葉 百合香, 桂川 泰典
    原稿種別: 資料
    2020 年 53 巻 1 号 p. 26-38
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル フリー

    ナラティヴ研究では,語り手と聞き手の語りの構築における共同性が重視されてきた。だが,カウンセリングにおいて共同性とは実際にどのように語りが共有される現象であるかは,明らかになっていない。本研究は,カウンセリングで生じる語りの共有プロセスを2者の相互作用に着目しながら記述的に検討することを目的とした。5組の模擬カウンセリングの実施後,ThとClそれぞれに「語りを共有する際に体験したこと」についてインタビューを行った。GTAにより得られたカテゴリー関連図からは,語りを共有する際の3つの段階(状況を取り入れる段階,共有する段階,共有による影響の段階)が明らかになった。ストーリーラインには2項関係から3項関係へ移行する様子が記述され,語りの共有は語りが共有されることのみが治療的なのではなく,「共有できた語り」と「未共有の語り」の間の境界線が明確になっていくことが治療の進展において重要な意味をもつことが示唆された。

  • 田中 将司
    原稿種別: 資料
    2020 年 53 巻 1 号 p. 39-51
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル フリー

    性指向でマイノリティの当事者へのカウンセリングでは,これまで性指向アイデンティティ発達モデルを援用し理解されることが多かった。しかし,他者との関係,社会歴史的文脈,アイデンティティの交差性などから,そのようなモデルでは必ずしも理解に至らなかった。本邦でも,例えば単一事例のナラティヴ研究から多様な理解が試みられているが,高齢期の当事者の研究はほとんどみられない。本研究では,70代ゲイ男性Aへのインタビューを対象ナラティヴとし,当事者がどのように人生を意味づけているか,個別性を重視して理解することを目的に研究を行った。分析にはシークエンス分析を参考にした方法を用いた。Aの場合,性指向へのネガティヴな語りの中にポジティヴな評価や態度の語りが混在したことが特徴的であった。例えば,『アウトロー』な生き方であること,カミングアウトするかしないかの『ドキドキ』を面白がっていることを語った。高齢であることなど,他のアイデンティティとの交差性が影響として考えられたが,『学生運動』『エイズパニック』といった本邦の時代背景に特に大きく影響を受けていたように思われた。

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