2024 年 57 巻 1 号 p. 1-13
治療的現前性は,心理療法における本質的な治療的態度である。COVID-19パンデミックにより遠隔カウンセリングが普及した現在,治療的現前性を高めるための新たな方法を見いだす必要性が高まっている。本研究では,治療的現前性目録(TPI)の日本語版を開発するとともに,遠隔で治療的現前性を体験することの可能性とその効果を探ることを目的とした。研究1では,日本語版TPIを作成し,その信頼性と妥当性をオンラインカウンセリングで検討した。研究2では,治療的現前性とクライエントの心理的変容の関連について検討した。研究1の結果から,日本語版TPIは十分な信頼性と妥当性をもつことが示唆された。研究2では,オンラインでも治療的現前性を体験できることが示された。また,初回セッションで強い治療的現前性を体験したクライエントにおいて対人的疎外感が継続的に減少した。これらの結果から,対面が不可能な場合においても,治療的現前性を通して孤独に苦しむクライエントを支援できる可能性が示されたと考えられる。