抄録
大阪市内には、明治以前から存在する農村集落や街道集落など、近代以降の都市発展によって周辺を市街地に取り囲まれながらも、いまだに集落形態を存続している古集落が存在している。多くの古集落では、神社での伝統的祭りに代表されるような地域コミュニティ活動が盛んに行われ、それらを継承し支えている旧来コミュニティが存在し続けている。周辺市街地に対して古集落の旧来コミュニティが核になり、地域コミュニティを形成しうるという可能性も考えられる。
本研究は、大阪市内において伝統的祭りが継承されている古集落を対象とし、その周辺市街地の発展過程と古集落内部の宅地変容を分析することによって、旧来コミュニティを構成する居住者の変質過程と現状を明らかにし、さらに伝統的祭りにおける旧来コミュニティの役割を明らかにすることを通じてその今日的な特性を考察した。