コミュニティ・ゾーン形成事業についての研究事例としては、コミュニティ・ゾーンに対する整備手法等などの評価や、計画とその実施についての研究などがある。また最近では、事業に対する環境質の価値意識と住民参加意識およびCVM(仮想評価法)による支払意思額との関係を分析した研究も行われている。しかし既存研究では、本来同時に意識される事業への価値意識をそれぞれ独立としたモデルで扱っているため、幾つかの環境質価値間における相互関係の分析には至っておらず、この相互関係が支払意思額や事業への参加態度に及ぼす影響についても明確に扱っていない。更に、この事業が公共事業であるという特質上、施設を利用する人への効用のみならず、全市民的な整備価値を考慮すべきであり、環境質的価値への評価も考慮が必要であると考える。これらの課題に対して、本研究では異なる特徴を持つ3カ所の住宅地区で調査を行い、この地区の特徴を様々な角度から分析し、この特性の下で、コミュニティ・ゾーン事業に対して意識される環境質価値の相互関係を比較分析することにより、これが支払意思額や参加態度にどのように影響しているかを明らかにした。