抄録
大規模再開発が現在進行中である大手町・丸の内・有楽町地区の変容を特徴づけるのは、文化的消費空間の展開である。本研究は、同地区での文化的消費と空間変容の関係を把握するためにHannigan(1998)の‘ファンタジー都市’の成立条件である美観と消費という概念を使い、ヘリテージ化と歩行空間化による2つのエンクレイブ(囲い込み空間)を同地区において特定し、その変容について検討する。前者では、文化的消費が地区固有の歴史性の演出と結びついて展開されており、後者ではそれが世界的に均一なコスモポリタン空間において展開されている。両者についてのより深い理解にあたっては、そこに介在するアクターや政治経済的な要因の把握がさらに必要である。