本研究では、京都市の高野川寮と城陽市の城南農工場を対象に、引揚者寮の運営実態と廃止をめぐる議論を明らかにした。高野川寮では、住民によって組織された自治会によって運営されていた。廃止をめぐる議論では、早期の廃止を求める土地所有者側と京都府との間と議論となった。所有側は、団地の建設や寮の一部を改修するといった譲歩を行い、土地の返還を求めた。城南農工場は、農地等の共同運営によって、農業コミュニティが結成された。廃止をめぐる議論では、農地の払い下げをめぐり、京都府と一部の住民が対立した。住民にとって農地は今までの生活基盤であり、廃止後の生活に大きく関わるものだった。それが取り上げられることになり大きな反発を招いた。