抄録
本研究では、欧州における近現代建造物の遺産登録の取り組みとオランダの近現代建造物の遺産登録と保全について明らかにしたうえで、近現代建造物の保全に関わる現状と課題について考察することで、日本における近現代建造物の文化財登録の示唆としたい。結果として、欧州の国家レベルでは、保全を行うよりも近現代建造物の把握と遺産的価値づけを重要視していると考えられる。近現代建造物は、団地や都市開発地区など大規模で複数の建造物群で構成されるものも多い。そのため日本では、新制度及び、登録有形文化財や伝統建造物群の制度等の選定基準を拡大し、オランダの復興遺産のように国や市町村の景観保護地域として指定することが必要となると考える。