森林立地
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論文
沖縄本島最北部における皆伐後の土砂移動量と林床環境との関係
大貫 靖浩古堅 公生沢 均松浦 俊也山下 尚之新垣 拓也
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2019 年 61 巻 1 号 p. 23-29

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抄録

沖縄本島最北部において,皆伐が大きい影響を及ぼすと考えられる表層土砂移動に焦点を当てて,皆伐区と隣接する対照区で土砂受箱を用いた土砂移動量測定を2014年から2015年の1年間にわたり実施し,斜面傾斜や林床被覆率との関係について明らかにした。皆伐区と対照区の土砂移動量の季節変化を検討した結果,梅雨,台風,冬季の降雨のそれぞれの影響は台風の襲来が平年よりも少なかったこともあり,冬季 < 台風 < 梅雨の順に大きかったが,皆伐区で重機による林床攪乱が大きかったプロット内では台風の降雨後に高い値を示した。また対照区内であっても,傾斜の急なプロットにおいては,土砂移動量は多かった。一方,土砂受箱周辺が下層植生でほぼ覆われている皆伐区のプロットでは,降水量の多寡にかかわらず対照区の傾斜の緩やかなプロットと同程度の小さい値を示した。土砂移動量と斜面傾斜・林床被覆率・表層土層厚との関係を検討した結果,林床被覆率が100%に近ければ,下層植生は土砂流出を止める大きな効果があるが,林床被覆率が50%程度またはそれ未満の場合,土砂移動量は傾斜と表層土層厚に大きく規定されることがわかった。

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