抄録
【トレーニング現場へのアイデア】従来の最大無酸素パワーの測定はPower Max VII (コナミ社
製)に内蔵されている3段階の負荷プロトコールで実施した結果、最大値の評価は他の競技種目
との比較が可能であり、各個人の最大無酸素パワー能力の評価ができる。しかしながら、競技
に適応した身体資源を獲得したアルペンスキー選手群では、より競技に特化した独自の最大無
酸素パワーの負荷プロトコールによる測定方法が有効である。
【目的】アルペンスキー選手に必要な身体資源としては最大無酸素パワー能力が求められる。
そこで、アルペンスキー選手はオフシーズン期に必要な身体資源の獲得が急務である。本研究
はアルペンスキー選手に求められる最大無酸素パワー能力を適切に評価するために最大無酸素
パワー測定による従来型のプロトコールと本研究で独自に考案したプロトールの比較を通し
て、アルペンスキー競技に適した最大無酸素パワー発揮能力の評価方法を検討することを目的
にした。
【方法】被験者は男子アルペンスキー選手32名であった。被験者の身体特性は年齢16.6±
0.9歳、身長170.4±6.3cm、体重67.9± 5.2kgであった。
被験者は異なる2種類のプロトコールによる最大無酸素パワーの測定を実施した。従来型のプ
ロトコールによる最大無酸素パワーの測定はパワーマックスVⅡ(コナミ社製)に内蔵されて
いるパーソナルコンピューターで3段階の負荷値により、被験者は10秒間の全力駆動運動を
実施して最大値を算出する方法で実施した。一方で、本研究は独自に体重当たりで3%、5%、
7.5%、9%、11%、13%、15%の7段階の負荷値で10秒間の全力駆動運動を実施した。
なお、測定結果の比較には対応のあるt検定を用いて危険率5%水準で行った。
【結果】2種類の負荷プロトコールによる比較では、従来型の負荷プロトコールが16.1± 1.
7watt/kgに対し本研究で考案した7段階の負荷プロトコールでは13.4± 2.2watt/kgで
有意な差が認められた(p<0.05)。一方、最大無酸素パワー発揮時に得られた至適負荷値で比
較すると、従来型の負荷プロトコールは8.7±1.1kpに対して本研究で考案した7段階
のプロトコールでは、至適負荷は9.3±1.7kpで従来型に比較して有意に高値を示した
(p<0.05)。
【考察】アルペンスキー選手に2種類の負荷プロトコールによる最大無酸素パワー測定を実施し
た結果、最大値による評価指標に加えて、アルペンスキー選手のパワー発揮特性を考慮した至
適負荷値を用いた評価法を用いるためには、7段階の最大無酸素パワーの負荷プロトコールに
よる測定が有効である。