千葉県立保健医療大学紀要
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第9回共同研究発表会(2018.8.28)
歯科診療室臨床実習における新たな評価法に関する研究
─ 学生評価と教員評価の活用 ─
酒巻 裕之大川 由一麻賀 多美代金子 潤荒川 真河野 舞鈴鹿 祐子山中 紗都
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2019 年 10 巻 1 号 p. 1_119

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抄録

(緒言)

 歯科衛生学科では併設されている歯科診療室において参加型臨床実習(CC)が行われている.歯科診療室の臨床実習では,個々の症例ごとの評価やフィードバックはなかったのが現状であった.CCにおける実践できるパフォーマンス・レベル(A)の評価には,「診療現場における学習者評価(WBA)」が利用される.WBAとして,Mini-Clinical encounter exerciseを参考に作成されたCC Snapshot評価が報告されている1).われわれは,歯科診療室において歯科衛生学科用CC Snapshot評価票を作成した.

 本研究では,歯科衛生学科用CC Snapshot評価の有用性について,平成29年度3年生を対象に,「歯科診療室総合実習」において,歯科衛生学科用CC Snapshot評価を活用して学生が担当した症例ごとに学生の自己評価,教員評価ならびにフィードバックを行い,「臨床実習開始から終了までの学生の到達度の変化」や,「学生の自己評価と教員評価の関連性」に関する情報を得,加えて臨床実習終了後に学生に対してCC Snapshot評価に関する質問紙調査を実施して検討した.

(研究方法)

ⅰ) CC Snapshot評価票に関する検討

 平成29年度歯科衛生学科3年生19名のうち,研究協力の同意を得られた者のCC Snapshot評価票の評価結果ならびに質問紙調査結果を研究対象とした.調査期間は平成29年11月~平成30年2月であった.症例を担当した学生は,CC Snapshotにて自己評価を行い,次いで教員からCC Snapshotによる評価とフィードバックを受けた.CC Snapshot評価票は,複写式の評価票で,学生用と本研究集計用とに分けた.集計用の評価票は,学生番号と氏名が複写されず,対照表のない匿名化を行った.5段階評価をスコア化し,検討した2)

ⅱ) 質問紙調査

 「診療室総合実習」終了時にCC Snapshot評価に関する質問紙調査を実施し,学生の評価から今後のCC Snapshot評価票の活用法について検討した.

統計処理は,JMP®pro 13.2.1を用いて分散分析を行い,危険率 p<0.05として検討した.

(結果)

 平成29年度歯科衛生学科3年生19名(100%)ら研究協力の同意を得られた.CC Snapshot評価票に関して,症例数は569症例で,集計・検討できたのは498症例であった.全体で,学生の自己評価は平均2.89076±0.00991,教員の評価平均は2.94831±0.00991で分散分析にて有意差を認めた(p<0.0001).診療内容別では歯周処置において,学生の自己評価(2.88736±0.01901)と教員評価(2.96803±0.01901)間に有意差を認めた(p=0.0030).実習が進むと自己評価ならびに教員の評価に上昇傾向が認められた.

 質問紙調査では,CC Snapshot評価票を用いた教員の評価やフィードバック,自己評価による振り返りは役に立つ結果が得られた.一方,歯科治療後に教員の評価を受けることが困難であったと指摘されていた.

(考察)

 CC Snapshot評価票を用いることにより,一症例ごとに自己評価,教員評価,フィードバックを行うことができ,学生は次の症例に向けて具体的な目標を立てやすくなっていた.

 歯科治療後のフィーダバックが円滑に行えるようにすることが課題となった.

 以上の結果から,CC Snapshot評価票は活用方法によって,形成的評価に活用できると考えられた.

(倫理規定)

 本研究は千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の承認(2017-030)を得て行われた.

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