2019 年 10 巻 1 号 p. 1_120
(緒言)
大学の英語教育カリキュラムにおいて,客観的指標を用いて学習目標を設定し,全学レベルあるいは学科,クラスの単位で成果測定を行うことが求められている.本研究では,客観的英語テストVELC Testを用いて,本学学生を対象とした習熟度診断およびプレイスメントテストとしての有効性を検証することを目的とする.
英語VELC Testは日本人大学生を対象として開発されたテストである(Kumazawa et al., 2015).比較的廉価(受験料864円)で,スコア結果は翌日にeポートフォリオにより受験生ごとに得られる.リスニング(語彙・音声解析・内容把握)とリーディング(語彙・文法と,構文・内容把握)の得点の他に,TOEIC予測スコア,状況別Can Doレベル診断(言語運用能力評価CEFR準拠),そしてスキル別正答率と学習アドバイスが含まれ,学生の英語学習の指標と共に今後の学習の励みとすることが期待されている.本研究では,英語VELC Test振り返りのアンケートも実施した.ただし,アンケートの分析については今後に残している.
(研究方法)
1.研究対象者
2017年前期および後期の研究代表者・分担者の担当する英語科目を履修した1年生・2年生.前期は1年生124名(内,男子学生14名),2年生26名(内,男子学生0名),後期は1年生20名(内,男子学生0名),2年生78名(内,男子学生3名)の合計248名であった.
2.研究方法
前期科目あるいは後期科目の最初の授業時にVELC Test(リスニング 約25分,リーディング 約45分)を実施した.さらに,VELC Testの難易度や結果の活用度などについて,4段階のLikert尺度によるアンケートを実施した.VELC Test受験者には研究調査の趣旨を口頭および文書で説明し,文書により同意書・不同意書を回収した.テスト結果提供に同意しなかった2名,アンケート回答提供に同意しなかった3名を除外して分析を行った.
(結果)
1.テストの信頼性
対象者246名の総合点の範囲は350点から648円(M =501.95, SD =50.81), リスニングは340点から710点(M =505.72, SD =57.70),リーディングは346点から637点(M =493.95, SD =57.85)であった.テストのリスニング点とリーディング点の内部一貫法による信頼性を示すクロンバックα係数は0.803であり,充分に高い数値を得られた.
2.テストの難易度
本学学生を対象として英語VELC Testを熟達度診断およびプレイスメントテストとして用いるためには,点数が幅広く分布し,適当な難易度である必要がある.そのためにシャピロ・ウィルク検定を用いて正規性分布であるか検証し,一部の学生に難しすぎたり(床面効果),易しすぎたり(天井効果)しないかを調べた.その結果,総合点はシャピロ・ウィルク検定(p>.05) により正規分布しており,歪度は0.031(SE =0.155),尖度0.416(SE =0.309)であった.同様にリーディング点も正規分布しており,歪度は0.017(SE=0.155),尖度-0.206(SE =0.309)であった.ただし,リスニング点は正規分布しておらず,歪度は0.317(SE =0.155),尖度1.275(SE =0.309)であった.
(考察)
以上の結果から,VELC Testは本学の学生を対象とした習熟度診断およびプレイスメントテストとして適切であることが示された.ただし,リスニングテスト単独では習熟度別クラス分けに使用するには注意が必要である.
(倫理規定)
本研究は,千葉県立保健医療大学倫理等審査委員会の承認(承認番号2017-007)を得て実施した.