千葉県立保健医療大学紀要
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平成29年度学長裁量研究抄録
大学生が行う地域のための健康づくり活動の実施と評価
渡邊 智子東本 恭幸細山田 康恵海老原 泰代阿曽 菜美岡田 亜紀子梶谷 節子小川 真島田 美恵子麻生 智子鈴鹿 佑子雄賀 多聡岡村 太郎竹内 弥彦
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2019 年 10 巻 1 号 p. 1_126

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抄録

(緒言)

 千葉県の健康課題の1つは高齢化率の上昇である.それに伴う元気な高齢者のための施策として健康づくりプログラムがあるが,内容に相違があり確定したものはない.また,その実施には,学生等の地域のボランティアの活動が期待されている.

 本学学生サークル食育応援隊は,科学的根拠に基づく食育を本学学生および千葉市周辺地域で実施し,一定の評価を得ているが高齢者を対象に活動を行ったことはない.しかし,本学での学びにより高齢者への健康づくり活動の重要性を理解している.

 そこで,本研究は千葉県内の高齢者を対象に「学科を超えて行う健康づくりモデルプログラム(以下,ほい大健康プログラム)」を作成し,学生と共に実施し,高齢者の健康づくりの課題を探索し,「ほい大健康プログラム」を確定するための指標とすることを目的とする.また,これまでと同様に本学学生への「ほい大ごはんカフェ(本学学生のための食事を喫食して学ぶ食育プログラム)を実施し,本学学生の課題を明らかにすることを目的とする.

(研究方法)

1.ほい大健康プログラム

 「ほい大健康プログラム(栄養分野,歯科衛生分野,理学分野,運動分野)」を作成し,千葉市内の8つのUR団地(花見川(11/11午前と午後),千草台(12/16午前),あやめ台(12/16午後),高洲第1(2/17午前),高洲第2(2/17午後),花見川(3/6午前と午後)で開催した.各プログラムは教員が実施し,学生が補助を行った.

 基本属性(生年月日,性別,服薬状況,既往歴),身体所見(身長,体重,BMI,血圧,握力,酸素飽和度),食習慣調査(卵の大きさで数える食事チェックシート大人用:以下,FFQ),歯や口に関するアンケート,塩味測定および本プログラムに対するアンケートを行った.FFQは当日(第1回)に実施しこれを現状の食習慣とし,その結果票および食事アドバイス票を1~2か月後に個別に返送する時に新しい食事調査票と返信用封筒を同封し,返送されたFFQ(第2回)を指導後の状況とした.なお,学生ボランテァは教員が募集した.

2.ほい大ごはんカフェ食育プログラム

 学生ホールで年5回(5/19,6/23,7/21,11/20,12/14)開催し,アンケートによりその評価をした.さらに,大学祭では地域の方を対象に実施した.

(結果)

1.ほい大健康プログラム

 参加者数(参加者,教員,学生)は,それぞれ花見川(午前11,10,8,午後11,9,8),千草台(32,11,11),あやめ台(25,11,11),高洲第1(25,13,10),高洲第2(9,13,10),花見川(午前23,11,13,午後 16,11,12),合計は参加者152名,教員(延べ)89名,学生(延べ)83名であった.FFQの回収率は92%,基本属性への質問への回収率は95%であった.これらのデータが回収できたもののみを解析対象とした.男性は女性に比べ,プログラムへの参加率が低く,主食中心の食生活の傾向であり,女性は,健康づくりや食生活への関心が高く,脂質の摂取割合が高かった.FFQに2回参加している者は,良い食習慣を持っていることが分かった.プログラム参加者の本プログラムに対する評価は高かった.

2.ほい大ごはんカフェ食育プログラム

 学生対象での参加者は,各回23~40名,大学祭での地域の方の参加は77名であった.アンケートでは,全カフェともに90%の参加者が,このカフェに満足し,リーフレットおよびプロジェクターがわかりやすいと回答した.さらに,大学祭では地域の方を対象に実施した.

(考察)

1.ほい大健康プログラム

 教員,URスタッフ,学生の連携は回を重ねるごとに強化されプログラムも改良された.学生は地域の高齢者の健康づくりのための専門職の活動に参加することで,専門職の活動の実際を実践的に学ぶことができた.アンケート結果をさらに解析・検討する予定である.

2.ほい大ごはんカフェ食育プログラム

 参加者募集が昨年度よりも容易になり,千葉県の農林水産部からエコ農産物の提供,千葉市健康支援課・千葉市食生活改善推進員が大学祭への参加(野菜クイズブース)など地域や他職種連携ができた.

(倫理規定)

 千葉県立保健大学倫理審査委員会で平成29年10月10 日に承認されている(2017-026).

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