千葉県立保健医療大学紀要
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第10回共同研究発表会(2019.8.28)
居宅患者の栄養管理向上に向けた管理栄養士と介護支援専門員との連携に関する研究
東本 恭幸長谷川 卓志渡邉 智子岡田 亜紀子
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2020 年 11 巻 1 号 p. 1_61

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抄録

(緒言)

 在宅医療への移行が加速している現在,在宅医療を受ける患者(以下,居宅療養者)の闘病を支える基礎的体力の維持・向上には適切な食事・栄養管理が重要である.介護専門員(ケアマネジャー,以下CM)は医師や看護師と並んで療養上の情報ソースとなる機会が多く1),2),居宅療養者および介護者からの食事・栄養・食品の情報ニーズも高い1)ものの,単独での対応は困難で,管理栄養士との連携も十分ではないという指摘3)がある.

 そこで本研究では,居宅療養者の食事・栄養支援におけるCMや地域包括支援センター(以下,センター)の関わりを明らかにして,在宅栄養管理の向上に向けた管理栄養士とCMとの連携の必要性等について検討することを目的とした.

(研究方法)

 千葉県内のセンター160施設(2018年5月末時点で登録されていた全施設)の主任介護支援専門員を対象に,郵送法による質問紙調査を行った.調査項目は,センターの施設概要,多職種連携状況,CMと居宅療養者の食事・栄養課題との関わり,研修・セミナー等 開催状況,管理栄養士との連携実績等である.統計解析ではp≦0.05のとき有意と判断した.

(結果)

 63センターから有効回答(39.4%)が得られた.医療圏別のセンター数と回収数の分布に有意差はなかった(Mann-Whitney’s U test:p=0.84).センターの運営主体は委託が79%を占め,直営(19%)の割合は医療圏による差はなかった(χ2 test:p=0.18).管轄地域の高齢者人口は平均15,200人であり全施設でよく把握されていたが,居宅療養者数を把握しているセンターは7施設(11%)に過ぎなかった.常勤・非常勤を含め管理栄養士を配置しているセンターはなかった.多職種連携が可能なセンターは53施設(84%)で,連携可能な職種として約3/4以上の施設があげたのは医師,理学療法士,看護師であり,管理栄養士をあげた施設は35施設(66%)にとどまった.管理栄養士との連携実績としては,住民対象の行事をあげたセンターが26施設と最も多く,CMの研修での連携をあげたセンターは7施設のみで,専門職対象の栄養関連セミナーの開催実績がないセンターも49施設(78%)と多かった.

 センターが管轄するCM数は3~170人(平均31.7人)で,CMから居宅療養者の食事・栄養課題の相談を受けたセンターは28施設(44%)あり,その内容としては食事量,摂食嚥下,買い物・食材入手に関するものが多かった.ケアプラン策定時に,CMが居宅療養者の食事・栄養を考慮していると評価したセンターは41施設(65%)であった.CMから食事・栄養研修を希望されたセンターは8施設(13%)に過ぎなかったが,CMに栄養の知識が必要と考えるセンターは61施設(97%)に達した.

(考察)

 地域包括ケアシステムの展開に伴って制度横断的な多面的支援が要求されるようになり,センターでは十分に対応できなかった医療サービス分野を補完する「在宅医療・介護連携支援センター」の設立が急ピッチで進んでいる.介護保険の知識を有する看護師や医療ソーシャルワーカーが常駐し,CMやセンターからの相談を受けるしくみである.CMは居宅療養者の生活を間近で看る存在であり,居宅療養者の様々な栄養課題を解決していくためには,管理栄養士の本来のリソース活用のみならず,CMも含めた多職種の連携が必要であることが示唆された.

(倫理規定)

 本研究は千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の 承認を得て実施した(2018-12).

(利益相反)

 本研究において申告すべきCOI状態はない.

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