千葉県立保健医療大学紀要
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第10回共同研究発表会(2019.8.28)
歯科衛生士学生におけるメンタルヘルスの検討
─ 歯科衛生士大学生と歯科衛生士専門学校生の比較 ─
河野 舞白井 要長澤 敏行
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2020 年 11 巻 1 号 p. 1_65

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抄録

(緒言)

 わが国における歯科衛生士国家試験の受験資格は歯科衛生士養成学校で3年以上の修業期間を満了することが必須であり,学校の種類には「専門学校(3年制)」「短期大学(3年制)」「大学(4年制)」がある.歯科衛生士養成学校において卒業までに習得しなければならない必須教育(専門知識および技術の習得)は概ね統一されているものの,教育方法には多くの違いがみられる.教育課程における歯科衛生士学生は,医療職一般のメンタルヘルスの問題に加え,教育現場において実践能力を身につける目的で体験型の学習方法が多く用いられることから,ストレスが多いことが報告されているが,本研究では,大学と専門学校に修業中の歯科衛生士学生のメンタルヘルスの経時的推移を調査し,修業年限におけるメンタルヘルスの違いについて検討することで,効果的な教育計画の整備や教育指導体制におけるひとつの指標として還元される可能性があるかどうか検討を行うことを目的とした.

(研究方法)

 対象者は2018年度に在籍した某大学および某専門学校の歯科衛生士学生とした.対象者には本研究の目的や守秘義務,回答内容は成績に全く影響しない旨などに関する説明後,質問紙の提出をもって同意が得られたものとした.質問紙による調査方法は自記式アン ケート調査GHQ28(General Health Questionnaire28)による精神健康度とし,調査は無記名で行った.調査時期および回数は前期授業開始時(以下前期),後期授業開始時(以下中期),学年末(以下後期)の3回とした. 統計解析はSPSS. Statistics Ver.25を用い,GHQ28における各評価の2群比較は等分散性の検定後にt検定もしくはMann-Whitneyの検定を,多群比較ではKruskal-Wallisの検定後,Bonferroniの多重比較検定を行い検討した.有意水準は5%未満とした.

(結果)

 学校別全体のGHQ28因子における得点の平均値を各時期(前期・中期・後期)で比較検討した結果,各時期間に有意差は認められなかった.各学校の学年別に各時期でGHQ28総合得点を比較検討した結果,専門学校では2年生の前期よりも中期において有意な高値を認め,大学では3年生の前期よりも中期に有意な高値を認めた.学校別に学年間でGHQ28総合得点を比較検討した結果,専門学校では有意差を認められなかったが,大学では後期において3年生は1年生と2年生よりも,4年生は2年生よりも有意な高値を認めた.1年生および最終学年(専門学校3年生と大学4年生)で学校別にGHQ28総合得点を比較検討した結果では,1年生の後期で大学よりも専門学校において有意な高値を認め,最終学年の後期では専門学校よりも大学において有意な高値を認めた.

(考察)

 本研究の結果から,進級するにつれて衛生士学生のストレス状況が増減することは認められず,常に一定のストレスを感じていることが推測された.また,専門学校2年生の前期よりも中期に,大学3年生の前期よりも中期にストレスを感じていることが認められたが,この時期間は両校とも臨床実習が開始される時期であることから,臨床実習はメンタルヘルスを低下させるストレス要因の一つである可能性が示唆された.修業年限におけるメンタルヘルスの違いには一貫性が得られなかったが,本研究の対象者は2校の学生のみであるため,結果を一般化することには注意を要すると思われる.メンタルヘルスには様々な要因が複雑に絡んでいることからも,効果的な教育を行うためにはメンタルヘルスと関連する要因について更なる検討が必要であり,適切な予防的介入教育の必要性も含め,ストレスコーピングについても今後更なる検討が必要と思われる.

(倫理規定)

 本研究は千葉県保健医療大学研究等倫理委員会(承認番号2017-40)と北海道医療大学倫理審査委員会(承認番号2016-113)の承認を得て実施した.

(利益相反)

 演題発表に関連し,開示すべきCOI関係にある企業等はない.

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