千葉県立保健医療大学紀要
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第10回共同研究発表会(2019.8.28)
アウトカム基盤型教育による歯科衛生教育での救急処置に関する教育法の検討
酒巻 裕之麻賀 多美代
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2020 年 11 巻 1 号 p. 1_67

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抄録

(緒言)

 地域完結型の歯科医療の提供において,口腔健康管理に携わる歯科衛生士は,単独で対象者処置を行うことが増加すると考えられる.歯科治療に関連する医療事故を予防するには,全身的評価を適正に行うために バイタルサインのモニタリングの実施,急変時におけ る一次救命処置(Based life support, BLS)として,自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator, AED)と人工呼吸を含む心肺蘇生(Cardipulmonary Resuscitation, CPR)の取扱い等に習熟していることが重要である.また歯科衛生業務の中では,集中治療室(Intensive Care Unit, ICU)等で気管挿管中の患者の口腔健康管理を実施する.

 そこで,歯科診療で救命救急処置を要する偶発症に対する一次救命処置から二次救命処置,病棟での管理の流れの中で,歯科衛生士ができる処置の習得を目標に,歯科診療室総合実習の課題学習の中でBLS,気管挿管,経口気管内挿管中の口腔健康管理,吸引処置等の一連のシナリオによる演習を行った.その効果について,実習の様子,プレテスト,質問紙調査結果から検討した.

(研究方法)

 平成30年度「歯科診療室総合実習」を履修する学生22名のうち,研究協力の同意を得られた学生から授業で得られた結果を対象とした.

 歯科診療において救命処置を要するような偶発症に対する救急処置や,ICUでの口腔健康管理の習得を目標に,課題学習の中でBLS,気管挿管患者の口腔健康管理におけるシナリオによる演習を行った.

 演習のシナリオについて,第1回目は一次救命処置としてBLS用シミュレーターでBLS,AED,バッグマスク人工呼吸を行った.BLS用シミュレーターは,人工呼吸では所要時間や換気量,胸骨圧迫ではリズム,圧迫の深さ,圧迫解除の有無が評価できる.次いで研究代表者が気管挿管練習用シミュレーターを用いて,気管内挿管手技を示し,ステップごとに学生が一人ひとり確認した.第2回目はチームCPAの習得を目標に,各学生がそれぞれの手技について習得すること,チームで連携する方法について検討・演習を行った.第3回目は口腔ケア用シミュレーターに気管内挿管された状態を設定し,口腔・咽頭・気管内吸引の演習と口腔・咽頭吸引の相互実習を行った.この演習は22名の学生を4班に分けて行われ,各班が課題学習終了日に客観的能力試験(Objective Structured Clinical Examina- tion, OSCE)形式の評価を行った.

 質問紙調査の調査項目には,学生の自己省察を深める質問項目に回答する欄を設けた1).本演習の効果について,課題学習におけるプレテスト,実習の様子, 課題学習最後の質問紙調査結果から検討した.

(結果)

 研究対象学生のうち,研究協力の同意を得られた14名の課題学習で得られた結果を対象とした.

 第1回目の演習では,CPRの各手技の確認,練習が中心となった.第3回目にチームCPRの演習を行った.質問紙調査結果から,チームCPR手技の習得ができ,チームワークの重要性協力する意義を理解できた回答があった.不満足な成果として気管挿管では理解が困難であったことが挙げられた.

(考察)

 歯科治療において起こりうる心肺停止や,ICUおける口腔健康管理に関する吸引処置について,その重要性とチームワークの重要性が確認できる意義ある演習であったと考えられた.

(倫理規定)

 本研究は本学研究等倫理委員会の承認(2018-30)を得て実施された.研究協力の依頼の説明は科目責任者ではない研究代表者が行った.本研究への協力の同意は対象者の自由意志で決定され,本研究の協力が得られなくても対象者の不利益になることはないこと,集計はその科目成績提出後に行い,集計結果等が成績に反映しない体制であることを説明した.

(利益相反)

 本研究発表内容に関して申告すべきCOI状態はない.

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