千葉県立保健医療大学紀要
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第10回共同研究発表会(2019.8.28)
地域在住高齢者の自助・互助活動を支援する手法の開発
雄賀多 聡島田 美恵子麻賀 多美代大川 由一雨宮 有子三宅 理江子竹内 弥彦岡村 太郎松尾 真輔中島 一郎
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2020 年 11 巻 1 号 p. 1_68

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抄録

(緒言)

 少子高齢化が諸外国に例を見ないスピードで進行するわが国において,多機関・多職種,地域住民の自助・互助などが連携した地域包括ケアシステムを構築することが喫緊の課題である.しかし,自治体主導の地域包括ケアにおける自助・互助の課題として「関連施設間の不十分な連携」「住民の主体性を重視した意欲の継続への支援不足」(佐藤)や「支援者―被支援者の固定的関係性からの脱却」(松繁)が挙げられている.

 千葉市地域包括ケア推進課の介護予防事業に,シニアリーダー(SL)養成講座がある.要介護認定を受けていない高齢住民が,介護予防の座学と介護予防体操の実技講習を受けた後,地域在住高齢者を対象とした介護予防体操教室を開催する地域在住高齢者の互助活動システムである.一方,本学における地域貢献方針のキーワードとしては,地域高齢者自身の内発的な活力を誘導し,高齢者個人・仲間・地域の活性化につなげる,いわゆる「エンパワメント(湧活)」が,学長より提唱されている.そこで,SL自らによるSL活動の効果検証を,我々が後方支援するような研究計画を立案した.

 本研究の目的は,千葉県立保健医療大学がSL活動の効果をSL自らが検証することへの後方支援手法が,「地域在住高齢者の自助・互助活動を支援する手法」として,本学の社会貢献活動足り得るか検討することである.

(研究方法)

 千葉市中央区SL代表者10名とともに,SL活動の効果を検証するためのアンケートを作成し,配布方法,回収方法を検討した.アンケートは基本属性と同居人数,介護保険受給状況,健康関連指標(SF-8),SL体操への満足度(4択),要望などの自由記述とした.

 SL(60名)を介し体操教室参加者(573名)を対象にアンケート調査①を実施した.①回収後の基礎集計結果をSL代表者会で報告し,SL代表者を対象としたアンケート調査②(今回の取組が参加者への理解の深まりやSLとしての力量アップに役立ったか等)を実施した.

(結果)

 調査①:494名(男性11.7% 平均年齢76.5±標準偏差6.3歳 範囲92~50歳)の回答(回収率86.2%).要介護度認定は,要支援1:25名,要支援2:2名,要介護1:1名.22%が単独世帯,31%が夫婦のみ世帯.39名(7.9%)が健康状態を「良くない」と回答.SF-8の身体的健康度は49.3±5.9点,精神的健康度は51.5±5.6点.運動の内容や時間・強度,開催日や開始時刻,指導法や仲間関係など,いずれも95%以上の者が「大変満足・まあ満足」と回答.自由記述は,「教室の継続」を多くが求めた.

 調査②:10名中10名より回答.SLが参加者へのアンケートを作成・回収し今後のSL活動に反映させる今回の手法への満足度は(満足8名,やや満足1名,やや不満1名),参加者への理解が(深まった6名,やや深まった1名,深まらなかった1名),指導力の養成に(役だった3名 まあ役立った3名 あまり役立たない1名),他地域での実施を(ぜひ実施5名 あった方がいい3名 あまりなくてもいい1名).

(考察)

 アンケート①で,体操教室参加住民の基本特性が明らかになると同時に,アンケート作成・回収を通してSLの自助,SLと参加者間の互助活動に寄与できると考えた.しかし,すべてのSLが今回の手法に肯定的ではなかったことから,質問内容や実施方法にさらなる検討が必要であることが示唆された.

(倫理規定)

 本研究は千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の承認を得て実施した(2018-29).

(利益相反)

 開示すべき利益相反はない.

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