千葉県立保健医療大学紀要
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平成30年度学長裁量研究抄録
千葉県の地域包括ケアを支える看護職者の研修ニーズに関する二次分析
:中小規模病院,介護保険施設,訪問看護ステーションの特徴
佐藤 まゆみ浅井 美千代杉本 知子西野 郁子佐藤 紀子川城 由紀子植村 由美子
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2020 年 11 巻 1 号 p. 1_82

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抄録

(緒言)

 本研究は,千葉県の地域包括ケアを支える看護職者の研修ニーズについて,平成25年7月~平成26年2月に千葉県健康福祉部医療整備課の委託を受けて実施した「平成25年度千葉県で働く看護職者の研修ニーズ調査(以下,平成25年度調査とする)」のデータの二次分析により,就業する施設の規模や就業分野における研修ニーズの特徴を明らかにすることを目的に行った.

(研究方法)

1.対象:平成25年度調査の対象者のうち,中小規模(200床未満)病院(316名),診療所(245名),訪問看護ステーション(82名),介護保険施設(115名)に所属していた758名

2.調査内容と方法:①臨床経験年数,従事している業務(看護実践業務,教育業務,管理業務)等の「属性」,②前年度に開催された「看護実践」「教育業務」「管理業務」「自己研鑽」に関する研修の受講状況,③今後,「看護実践業務」を遂行するために受けたいと思う研修とその理由(自由記述形式),④施設外での研修に参加しづらい理由などについて尋ねた質問紙を作成し,郵送法による調査を実施した.

3.分析方法

1)質的データの分析:調査内容③の看護実践業務を遂行するために研修を希望する理由の自由記述による回答を質的に分析した.その上で,就業分野等による違いを比較した.

2)量的データの分析:調査内容④「施設外での研修に参加しづらい理由(全くあてはまらない・あてはまらない=0,あてはまる・とてもあてはまる=1)」について,調査内容②「前年度に開催された研修の受講状況(研修を受けない=0,研修を受けた=1)」との関連を単変量ロジスティック回帰分析により,また,探索的因子分析により検討した.

(結果)

1.看護職者が研修を希望する理由

 今後,看護実践業務を遂行するために看護職者が研修を希望する理由として,「よい看護が提供できるよう組織内を改革したい」「実践能力を高めたい」「部署で必要となる知識・技術を得たい」「自身の健康を保ちながら仕事を続けたい」「世相を反映した問題に直面している」「現在の環境では学習ができない」の6つが明らかになった.このうち,「実践能力を高めたい」という理由が最も多く,就業分野による違いはみられなかった.

2.施設外での研修に参加しづらい理由

 看護実践業務に関する研修では,「どこでどのような研修が行われているのか情報が少なく,うまく参加できない」(OR=0.597,p=0.021)「研修会の内容が明確でないため,参加しづらい」(OR=0.531,p=0.021)の2項目に関連が認められた.しかし,教育業務,管理業務,および自己研鑽のための研修は,全ての項目で関連が認められなかった.

 探索的因子分析の結果,施設外研修に参加しづらい理由として「研修に関する情報を入手しにくく,参加を希望する研修がみつからない」などの3因子が,施設外研修を受ける際に重視する点として「研修参加がもたらす利益と研修内容」などの3因子が抽出された.

(考察)

 中小規模病院,訪問看護ステーションなどいずれの就業分野でもニーズの高かった「看護実践能力を高めるための研修」を企画すること,広報活動を行うことにより,研修参加が促進され,看護実践の向上を図ることが期待できる.

(倫理規定)

 平成25年度調査は,千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の承認を得て実施した(倫理審査承認番号2013-013).また今回,上記の調査結果の再分析を行うにあたり,千葉県医療整備課からデータ使用の許可を得た.

(利益相反)

 本研究における利益相反はない.

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