本研究は,成人対象者に対して,歯科専門職が7つの検査項目を用いて口腔機能低下症の評価を実施し,その結果と結果に基づいた口腔機能維持・向上のための個別のアドバイスを行った.また質問紙調査により,対象者の口腔機能低下症の理解や口腔保健行動に与える影響について把握し, 歯科衛生士として口腔機能低下症を予防する啓発方法を検討した.
対象者は30 名(69.4±9.02 歳)であり,口腔機能低下症と評価された者は4 名(13.3%)であった.検査項目別では,舌口唇運動機能低下10 名(33.3%)が最も多く見られた.口腔保健行動に関する質問紙調査を介入前後で比較すると,「口腔機能低下症を知っている」が36.7%から83.4%に,「オーラルフレイルを知っている」20.0%から50%に増加した.一方,歯周病,う蝕の予防への関心度は減少したことから,対象者は自身の口腔状態を知り口腔機能低下症を認知したと考えられるが,改善が必要な項目も見られ,今後の課題となった.