千葉県立保健医療大学紀要
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第13回共同研究発表会(2022.9.12~9.16)
中小規模の周産期医療機関に転職した中堅助産師のキャリアニーズの現状とキャリア支援プログラムの考案
北川 良子川城 由紀子川村 紀子増田 恵美山﨑 麻子石井 邦子
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2023 年 14 巻 1 号 p. 1_86

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抄録

(緒言)

 令和2年度の千葉県の助産師就業者数は1.497人であり,人口10万人当たりの人数は23.9人と全国ワースト2位で就業人数が少ない現状がある.また就業場所別では病院が800人(53.4%),診療所426人(28.5%)となっており,診療所に就業する人数は病院の約半数である一方で,出産数は全国的に病院と診療所で半数ずつであり,助産師の就業場所の偏在が問題になっている.本学の母性・助産学実習は産科専門病院,産科診療所においても実習を行っており中小規模の周産期医療機関の責任者より,実習指導を担う助産師のキャリア支援を本学に要望する声が上がっている.そこでキャリア支援プログラムを考案するために,中小規模の周産期医療機関に中途採用された助産師のキャリアニーズを質問紙調査により明らかにすることを目的とした.

(研究方法)

 対象者は中小規模の周産期医療機関に転職し1~2年前後の中堅助産師(臨床経験4年目以上)である.データ収集方法は自記式無記名質問紙調査もしくはFormsを使用した無記名アンケート調査とした.データ収集期間は令和4年1~4月である.調査内容はデモグラフィックデータ(年齢,助産師通算経験年数,家庭環境,現在の職場環境に関する項目)と,臨床経験・就業経験に関する内容(助産師実践能力習熟段階CLoCMiP® レベルⅢ認証制度の用件を参考に助産ケアの経験と,必修研修の受講状況(新生児蘇生法NCPR,分娩期の胎児心拍数陣痛図に関する研修や学術集会参加),基礎教育終了後に就業した施設の種類と配属先・就業期間,転職した施設の種類と配属先・就業期間等である.また転職した理由,転職した結果に関する認識とキャリアに関するニーズ等は自由記述で収集した.分析方法は基本統計量を算出し,自由記述は意味内容を損なわず様にコード化を行い,項目ごとに類似性や異質性に基づきカテゴリ化を行った.

(結果)

 75の産科診療所および産科を有する200床未満の病院に依頼し,10の施設より承諾が得られた(承諾率13.3%).質問紙の配布数は15部うち10部回収(66.6%).QRコードによる回答は27,回答数は37であった.対象者の平均年齢39.7歳),助産師としての平均通算経験年数は14.6年であった.子どもがいる対象者は31名,介護が必要な家族がいる対象者は7名であった.雇用形態は正規職員20名,パート・短時間勤務17名,勤務形態は夜勤を含む交替勤務18名,日勤のみ19名であった.現在の施設における院内研修の参加人数は27名,.助産師実践能力習熟段階CLoCMiP レベルⅢ(アドバンス助産師)の認定者は9 名であった.

 1回目の転職理由は結婚・出産・転居などの【ライフスタイル変化】の他【助産師としての他の経験値を取得】等であった.現施設への転職理由は【希望する助産ケアの実施】,【仕事への復帰】,【ワークライフバランス(以下WLB)の保持】等であった.現施設を満足と答えた対象者は32名でその理由は【良好な職場環境】,【実践している助産ケアが良い】等であった.今後のキャリア継続については【助産師として希望する活動内容が具体的にある】,【フルタイム・夜勤に復帰する】,【WLBを保つ】等であった.希望するキャリア支援として【助産ケアに活用できる内容の研修】,【資格取得のための支援】,【WLBを保つための支援】がある一方で施設内外問わず【望むキャリア支援はない】という記述が一定数あった.

(考察)

 中小規模の周産期医療機関に転職し1~2年前後の中堅助産師は,ライフスタイルの変化や希望する助産ケアが実施できる施設に転職し,良好な職場環境下でWLBを保持している現状が明らかになった.勤務時間や夜勤の免除などを受けている一方,いずれは常勤・夜勤の復帰を希望していた.対象者はWLBを保つことに重きが置かれているため,最新の周産期医療に関する研修などのキャリア支援があっても参加できず,CLoCMiP® レベルⅢ認証制度の更新を諦める様子もうかがえ,キャリア支援プログラムはライフスタイルの変化を考慮し長期的な視点で支援する必要性があると考えられる.

(倫理規定)

 本研究は千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会にて承認を受け実施した(2021-33).

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