千葉県立保健医療大学紀要
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第13回共同研究発表会(2022.9.12~9.16)
地域住民のロコモティブシンドロームに関する実態調査と予防活動に向けた予備検討
―若年者を対象として―
江戸 優裕酒井 克也成田 悠哉松尾 真輔堀本 佳誉大谷 拓哉島田 美恵子岡村 太郎三和 真人
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2023 年 14 巻 1 号 p. 1_85

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抄録

(緒言)

 ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)とは,筋や骨などの運動器の障害により歩行などの移動能力が低下し,要介護となるリスクが高い状態を指す.ロコモの重要な基礎疾患の一つであるサルコペニアは,以前は加齢による骨格筋量の減少として表現されていたが,近年では筋の量だけでなく質の低下も着目されている.これは筋量よりも先に質が低下するためであり,サルコペニアひいてはロコモの予防・改善には筋の量と質の評価が重要である.

 こうした背景から,我々は高齢者のロコモ対策を目的として,歩行能力や筋機能に関する健康調査と健康教室を計画した.本研究は今後の活動に向けたパイロットスタディとして位置づけ,少人数の高齢者を対象とする計画であった.しかし,COVID-19の流行によって高齢者関連団体との調整が困難となり,対象を若年者に変更して実施した.対象者の変更によりパイロットスタディとして十分な検討は困難だったが,将来的な高齢者対象の調査に向けて,①基礎データを得るとともに,②健康調査と健康教室の所要時間やマンパワーなどについて試算した.

(研究方法)

 対象は本学在籍の若年者26名であり,内訳は男性9名・女性17名,年齢21.5±3.4歳,身長162.0±8.8cm,体重56.0±9.8kg(mean±SD)であった.

 健康調査は,ロコモ,サルコペニア,筋機能に関する項目であり,片側ずつ調べる項目は右を対象とした.ロコモに関しては日本整形外科学会の判定基準に基づく項目を実施した.サルコペニアはAWGS2019の診断基準に基づく項目を実施した(骨格筋量測定は非実施).筋機能は徒手筋力計(モービィMT-100,酒井医療)を用いて等尺性大腿四頭筋筋力を測定し,超音波画像診断装置(SONIMAGE HS2,コニカミノルタ)を用いて大腿直筋(以下,RF)と中間広筋(以下,VI)の筋厚・筋輝度・羽状角・筋束長を測定した(VIの筋輝度は非実施).

 健康教室は,健康調査項目に関する講話と,ロコトレ(ロコモ予防トレーニング)・コグニサイズ(認知症予防エクササイズ)を実施した.

 データ分析は,各調査項目間の相関係数をみた.また,健康調査と健康教室の様子を研究者が観察し,改善点を質的に検討した.なお,今回使用した会場は床面積200m2以上で,スタッフ6名で実施した.

(結果)

 調査結果をmean±SD/ median(IQR)で示す.

 ロコモに関しては,立ち上がりテストは0(0-2)(0:片脚10cm台~7:両足40cm台で順序尺度化),2ステップ値は1.6±0.1,ロコモ25は0 (0-1.8) 点であり,ロコモ度1と2に1名ずつ該当した.

 サルコペニアに関しては,Calf circumferenceは35.1± 2.5cm,SARC-F は0 (0-0)点,握力は28.0(23.0-35.3)kg,歩行速度は1.5±0.3m/sec,5回椅子起立時間は6.7(5.7-8.4)sec,SPPBは12(12-12)点であり,サルコペニアが疑われる者はいなかった.

 筋機能に関しては,大腿四頭筋筋力は1031(906-1375)kg.cm,RF の筋厚1.4±0.3cm・筋輝度88.4±17.9a.u.・羽状角5.4±1.4deg・筋束長14.2(11.3-17.6)cm,VI の筋厚1.0±0.4cm・羽状角5.1±1.4deg・筋束長11.9±4.0cmであった.

 相関分析の結果,ロコモ関連項目に関しては,2ステップ値とRF筋輝度(r=0.39),ロコモ度と歩行速度(rs=-0.43)に有意な相関が認められた.また,健康調査と健康教室の一連の所要時間は約3時間で,所々で対象者が若干停滞する様子が見られた.

(考察)

 今回対象となったのは若年者であったが,26名中2名がロコモに該当した.そして,ロコモ関連項目と筋の質的項目との間に相関が認められたことから,筋の質的評価の重要性が改めて強調された.

 本研究を通じて,高齢者を対象として同等(規模・内容・感染症対策など)の健康調査・健康教室を行うには,10名程度のスタッフが必要と試算された.

(倫理規定)

 対象者には研究内容を説明し,書面で同意を得た.本研究は千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号:2021-30).

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