千葉県立保健医療大学紀要
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第13回共同研究発表会(2022.9.12~9.16)
健康問題をもつ老年期の看護職が就労継続を可能にする工夫
櫻井 理恵杉本 知子相馬 由紀子佐伯 恭子
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2023 年 14 巻 1 号 p. 1_94

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抄録

(緒言)

 平成30年度,65歳以上の介護労働者の割合は,全体の1割を超え,令和3年度では7割弱の事業所で 65歳以上の労働者を雇用1)している.高齢者は明らかな疾患がなくても,加齢により,身体機能や認知機能の低下は避けられない.また,生活習慣などの影響から健康問題を抱える者は増加する.

 介護保険施設に勤務する看護・介護職員は,専門職であるがゆえ,年齢が高くなってもそのスキルを活かすことはメリットであり,マンパワーが慢性的に不足している医療・福祉の職場において,現場を支える大きな力である.65歳以上の看護職においても,加齢に伴う心身の機能低下や健康問題から何らかの影響が生じながらも,就労を実現している現状があると考える.そこで本研究は,介護保険施設において,健康問題を持ちながら,療養生活と仕事を両立している老年期の看護職が,就労継続を可能にする工夫を明らかにすることを目的とした.

(研究方法)

 対象は,関東圏内の介護保険施設において,看護職として就労しており,何らかの健康問題を持ち,療養生活と仕事を両立している65歳以上の者である.半構成的面接法を用いて調査を行った.インタビューで得られた語りを逐語録化し,「健康問題を自覚している老年期の看護職が就労継続を可能にする工夫」について,意味のあるまとまりを1単位として抽出し,コードを作成した.コードの共通性を検討し,サブカテゴリー,カテゴリーを作成した.分析は,研究者間で検討を行い,信頼性と妥当性の確保を行った.

(結果)

 同意を得られた4名にインタビューを行った.調査は1名につき1回,32~51分であった.4名の内訳は,看護師2名,准看護師2名,60代後半から70代前半で,週4~5日の日勤勤務を行っていた.分析の結果,「健康問題を自覚している老年期の看護職が就労継続を可能にする工夫」には,8つのカテゴリー,23のサブカテゴリー,103のコードが得られた.以下にカテゴリーを【 】,サブカテゴリーを「」で示す.

 老年期の看護職は,現在,仕事を制限するほどの影響は生じていないものの,年齢的に不調をきたしやすいことを考慮し,「日勤中心の勤務への変更」「通勤しやすい職場の選択」など【気力・体力に合った就業環境の選択】をしていた.また,細かい文字を見る,腰部に負担がかかるなど「精神的・肉体的負担の重い業務の回避」をしながら,「自分ができる業務を率先して実施」し,「他スタッフと業務の協力」を行い,【自分の強みと弱みを活かした業務調整】をしていた.【心身の加齢変化の予防】として,「体力維持トレーニングの継続」や「認知機能維持への取り組みの継続」「社会的役割をもつことでの健康維持」があった.すでにある健康問題に対しては,「定期通院による体調悪化の予防」のほか,「日々の自己管理による体調悪化の予防」など,看護師の経験も活かした【体調の維持管理】を行い,【周囲の協力の獲得】もしていた.「働き続ける年齢の目標設定」や,「利用者ケアでの学びをモチベーションとして活用」し,【近い将来を見据えたポジティブな目標設定】を行っていた.「長年の経験が活かせる業務の選択」「納得のいく仕事ができる勤務形態への変更」などを行い【経験上納得のいく仕事結果の維持】をしながらも,「迷惑をかけずに働けるかを自問自答」して「引き際を考慮」し,【納得のいく仕事結果になっているかを自己評価】していた.

(考察)

 老年期の看護職は,加齢により,以前とは変化した心身の状態の中で,自身の経験から培った看護職としての知識・技術などの強みを,最大限発揮できる状態で就労ができる環境を選択・調整していた.また,その心身の状態や就労環境の中で,納得のいく仕事結果を出すという目標設定を行っていると考えられた.そして,その目標が達成できるための努力を日々行っていることが考えられた.

(倫理規定)

 本研究は,千葉県立保健医療大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号2021-02).

 本研究において,申告すべきCOIはない.

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