千葉県立保健医療大学紀要
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第14回共同研究発表会(2023.9.12~9.16)
新人看護師の夜勤導入における看護実践マネジメントモデルの検討
富樫 恵美子西村 宣子
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2024 年 15 巻 1 号 p. 1_56

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抄録

(緒言)

 医師の働き方改革が2024年4月から開始となる中,医師と共にコロナ禍でその医療に尽力した看護師の働き方にも関心が集まっている.日本看護協会が行った2021年次の調査(病院看護実態調査,2022)において,新卒採用者の離職率は10.3%と,2005年以降初めて10%を超えたことが報告されている.また,職能団体である日本看護協会は「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」(2021年3月)の中で,第1の要因として「夜勤負担」を掲げている.

 これらのことから,基礎教育を修了し臨床現場で働く新人看護師が特に夜勤に適応し,就業継続に繋がる実践的なマネジメントが課題である.

 若年就業者の早期離職問題の原因として上げられるのが,組織参入前に個人が抱く期待と現実のミスマッチによって生じるリアリティ・ショック(尾形,2012)と言われている.その組織参入時に生じる多様な心理に着目し,マネジメントの視点から「組織になじませる力」としてオンボーディングという概念で,「情報を与えるインフォーム行動」「迎え入れるウェルカム行動」「導くガイド行動」の3つの機能があると言われる(尾形,2022).今回,得られた結果をもとにオンボーディング施策を基に「新人看護師の夜勤導入における看護実践マネジメントモデル」を検討したためここに報告する.

(研究方法)

1.研究対象者:関東圏内にある300床未満の中小規模病院に勤務する看護師長6名,夜勤指導者(中堅看護師)6名,新人看護師8名

2.調査期間:2022年2月~3月

3.データ収集方法:対象者に半構造化インタビューをWeb会議システムにて実施した.

4.分析方法:インタビュー内容を逐語録にし,看護師長,夜勤指導者(中堅看護師),新人看護師の夜勤導入におけるマネジメントに関する記述を抽出した.

5.4.を基にオンボーディングのフレームワークに沿って整理し,マネジメントモデルの検討を行った.

(結果)

 看護師長,夜勤指導者(中堅看護師),新人看護師のマネジメントに関するコード数は326であり,オンボーディングのフレームワークに整理した.

1)情報を与えるインフォーム行動(コード数74)

① コミュニケーション:「夜勤導入前にイメージを持たせる」「定期面談を行い声をかける」

② リソースの提供:「病院が作成した夜勤前の技術チェックリストを渡す」「病棟で作成した夜勤時の流れのマニュアルを見せる」「特に基準はなくスタッフの判断に委ねる」

③ トレーニング:「病院の集合研修に参加させる」「夜勤を体験させる機会をつくる」

2)迎え入れるウェルカム行動(コード数36)

 「こまめに声をかける」「臨床心理士へ面談依頼」

3)導くガイド行動(コード数216)

 「プリセプターやチューターと夜勤を組む」「受け持ち人数を段階的に増やす」「勤務終了時に振り返りを行う」

(考察)

1)情報を与えるインフォーム行動は「新入社員が円滑に活動していく方法を学べる経験は,多くのオンボーディング施策がここに含まれる」(尾形,2022)といわているが,施設により異なっており「基準がなくスタッフに委ねられる」というものもあった.このことは,新人看護師にとって何を目標にしたらいいかわからず,そのことから夜勤指導者の目標とずれてしまう危険性を含んでおり検討を要する.

2)迎え入れるウェルカム行動では今回の研究で,一番コード数が少ない結果から,オンボーディング施策として取り入れられてないと考えられる.新人看護師の「夜勤中に先輩がちょっと世間話をしてくださって,ちょっと緊張がほぐれるようなとても心が落ち着く」という語りがあり,コロナ禍での交流が少ない状況下,意図的にウェルカム行動を取り入れることは,看護職のオンボーディングにとって意義があると考察する.

3)導くガイド行動については,専門職の育成として,各施設が自部署の特徴を踏まえ,綿密に実施していることが示唆された.

(倫理規定)

 本研究は千葉県保健医療大学研究等倫理委員会の承認(承認番号2021-17)を得て実施した.

(利益相反)

 本研究に関して申告すべきCOI状態はない.

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