千葉県立保健医療大学紀要
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令和4年度学長裁量研究抄録
千葉県内医療機関に入職した新人看護師が感じる困難
内海 恵美大塚 知子大内 美穂子坂本 明子田口 智恵美三枝 香代子浅井 美千代
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2024 年 15 巻 1 号 p. 1_65

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抄録

(緒言)

 本研究は,看護師の国家資格を得て,千葉県内の病院に入職した新人看護師が,職場で抱えている困難を明らかにし,本県の臨床現場に則した看護基礎教育の在り方を検討することを目的に実施したものである.

(研究方法)

対象:2022年度に県内病院に入職した新人看護師.

方法:県内病院名簿記載の約290施設のうち,看護管理者の協力同意を得られた52施設の対象者に無記名式Webアンケート調査を実施した.

期間:2023年1~2月.

内容:対象者の属性(選択式),看護師として働いて困難を感じた項目(厚生労働省新人看護職員研修ガイドライン改訂版を参考に作成,選択式),印象に残っている困難体験,看護基礎教育課程で教えてほしかった内容,学生時代に身につけておくべきだったと思う看護実践能力,卒業後にあったらよいと思う支援(以上自由記述).

分析方法:量的データは単純集計,自由記述は設問ごとに記述内容を抽出しカテゴリー化した.

(結果)

 844名に配布し,244名から回答を得た(回収率28.9%).

1.対象者の属性 在籍した学校種は,看護系専門学校が133名(54.5%),4年制大学が99名(40.6%),高等学校専攻科が12名(4.9%)であった.所属施設規模は病床数300床以上が164名(67.2%),200床以上300床未満が32名(15.2%),100床以上200床未満が23名(9.4%),100床未満が20名(8.2%)であった.

2.看護師として働いて困難を感じた項目 対象者の半数以上が働いていて困難を感じたと回答した項目は20項目にのぼった.なかでも「決められた業務を時間内に実施できるようにする(75.8%)」「複数の患者の看護ケアの優先度を考えて行動する(71.3%)」「業務上の報告・連絡・相談を適切に行う(56.2%)」と業務遂行に関する項目で多かった.ほか,「人工呼吸器の管理(72.5%)」「体動,移動に注意が必要な患者への援助(65.6%)」「費用対効果を考慮して衛生材料の物品を適切に選択する(59.8%)」などが挙げられた.

3.印象に残っている困難体験 241コードから65サブカテゴリ,17カテゴリが生成され,【実習では扱わない機器・薬剤の管理】【急変時の対応】【勤務時間の管理】【個別性を踏まえた看護】【臨床応用が必要な看護技術】等として示された.看護基礎教育課程で教えてほしかった内容は,269コードから87のサブカテゴリが生成され,【より臨床に近い実践的な技術】【より実践的な看護記録の書き方】【看護師の業務の実際】等の16のカテゴリとなった.学生時代に身につけておくべきだったと思う看護実践能力は,331コードが抽出され,【急変時の判断・対応力】【看護技術力】【臨床応用力】ら7つのカテゴリが生成された.また,卒業後に学校からあったらよいと思う支援として97コードから【同級生との情報共有】【疑問や悩みの相談】【知識・技術習得のための学習支援】等の6つのカテゴリが生成された.

(考察)

 新人看護師は,実習での経験が無い機器や薬剤の管理など,病棟・ユニットでの業務に困難を感じ,また多重業務の中で優先順位を決定すること,個別性のある看護を提供することに苦慮していた.そして看護基礎教育課程において,より臨床に近い看護技術力や臨床応用力を身につける必要性があることを実感していた.加えて,卒業後の支援として情報共有や悩みの相談,知識・技術の習得機会を挙げていた.

 今回の対象者は,新型コロナウイルス感染症が流行・社会問題化した2020年度は在学中(3年課程では2年次生,4年課程では3年次生)であったことから,学修活動に大きな影響を受けたことが想像された.よってこれらの結果は,コロナ禍の影響として実習経験や実践の機会が少なかったことが影響している可能性が考えられる.しかしながら,患者の高齢化・医療の高度化・入院期間の短縮化など臨床現場が複雑化するなかでは,コロナ禍如何にかかわらず,実践的な技術・判断・対応力を養うことができる授業・演習の構築が求められると考える.

(倫理規定)

 研究者所属施設倫理委員会の承認を得て実施した.(承認番号2022-16)

 なお本研究の一部は,日本看護学教育学会第33回学術集会にて発表した.

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