臨床リウマチ
Online ISSN : 2189-0595
Print ISSN : 0914-8760
ISSN-L : 0914-8760
原著
バセドウ病に対するPropylthiouracil(PTU)治療再開後1ケ月で顕微鏡的多発血管炎を発症した一例および過去の報告79例の文献的考察
井上 誠岡崎 貴裕北園 貴子柴田 朋彦水島 万智子山崎 宜興東 浩平山前 正臣尾崎 承一
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 22 巻 2 号 p. 243-249

詳細
抄録

   34歳男性.30歳時にバセドウ病と診断され,methylmercaptoimidazole(MMI)にアレルギー反応を認めたためpropylthiouracil(PTU)にて加療されていた.6ケ月前にPTUの投与が一旦終了したが,2ケ月後にバセドウ病再燃のためPTUが再投与された.その再投与1ケ月後から,発熱,筋痛,関節痛,消化管出血が出現.その後,尿潜血,MPO-ANCA陽性を指摘され,血管炎症候群が疑われた為,当院へ紹介入院となった.胸部CTおよび腎生検より間質性肺炎と巣状壊死性糸球体腎炎を認め,顕微鏡的多発血管炎(MPA)と診断した.PTU中止後も臨床所見が改善しなかったため,プレドニゾロン(PSL)0.5mg/kg/日を投与し症状は改善傾向を示した.本症例はPTU再投与後から症状を認め,PTUの再投与がMPAを促進した可能性があると推察された.既報79症例も併せて検討した結果,約10%の症例が,PTUの再投与により血管炎が誘発されており,PTUの再投与においても血管炎を誘発する可能性に注意が必要であることが示唆された.

著者関連情報
© 2010 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
前の記事 次の記事
feedback
Top