臨床リウマチ
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総説
小児リウマチ性疾患における成長と骨代謝
井上 祐三朗冨板 美奈子皆川 真規下条 直樹河野 陽一
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2011 年 23 巻 1 号 p. 22-28

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抄録

   小児リウマチ性疾患患者では原疾患と治療の双方が成長障害と骨代謝異常の原因となりうる.多関節型および全身型若年性特発性関節炎(JIA)においては,TNF-α,IL-1β,IL-6などの炎症性サイトカインが,成長軟骨板の軟骨細胞の増殖の抑制や細胞死を誘導し,長管骨の骨伸長が抑制され成長障害をきたす.また,小児リウマチ性疾患に対する中心的な治療薬剤であるグルココルチコイドは,下垂体からの成長ホルモンを抑制し成長障害を誘導する.
   骨代謝に対しては,RAと同様にJIAにおいても,TNF-αやIL-1βなどが滑膜細胞やT細胞におけるRANKLの発現を誘導し,これにより誘導される破骨細胞が関節破壊だけでなく骨塩量低下も引き起こすと考えられている.また,成人と同様に小児期においてもステロイド性骨粗鬆症が大きな問題である.本来小児期は成長に伴って骨塩量が増加する時期であるため,原疾患や治療により骨塩量低下をきたしPeak Bone Massが減少した患者は,小児期のみならずその後の一生にわたり骨折リスクを有することになる.
   成長障害に対するリコンビナント成長ホルモン,骨粗鬆症に対するビスフォスフォネート製剤の投与が,海外を中心に試みられ一定の効果を認めているが,本邦においてはこれらの積極的な介入はまだ一般的ではなく,今後の臨床研究が望まれる.

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© 2011 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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