臨床リウマチ
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23 巻, 1 号
臨床リウマチ
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Editor's Eye
誌説
総説
  • 柱本 照
    2011 年23 巻1 号 p. 11-15
    発行日: 2011/03/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
       血管新生因子Angiopoietin-1(Ang-1)は,ERK/MAPキナーゼ系とPI3キナーゼ/Akt系を介してリウマチ性疾患の病態形成に関与する.関節リウマチ滑膜細胞においては,Ang-1の刺激によってAktおよびNFκBの活性化がもたらされ,滑膜細胞のアポトーシス抵抗性獲得に寄与している.また,Ang-1はRhoファミリー低分子量GTP結合蛋白質群も活性化し,滑膜細胞の遊走能を亢進させて骨軟骨破壊を促進させる.一方,新規に同定された269Gry挿入型ANG-1蛋白は,肺血管内皮細胞のERK/MAPキナーゼ系の活性化とendtohelin-1産生亢進を介して混合性結合組織病や強皮症患者に合併する肺高血圧症の病因となることが示唆された.
  • 田中 一成, 佐浦 隆一
    2011 年23 巻1 号 p. 16-21
    発行日: 2011/03/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
       近年,生物製剤の導入により,関節リウマチ(以下,RA)の治療は「Care」から「Cure」の時代へ変遷したといわれ,治療目標も臨床的寛解,構造的寛解,機能的寛解のすべてを満たす完全寛解の導入,さらには寛解導入後の生物製剤からの離脱(ドラッグフリー)の可能性まで論じられている.このようなパラダイムシフトのなかで,リハビリテーション(以下,リハ)の位置づけはどのように変わっていくのであろうか?
       生物製剤の早期導入によりRA患者の機能レベルの低下(インペアメント)は全体として軽減していくと考えられるが,それでもRA患者の不安が尽きることはなく,インペアメントが軽度であるのでリハが必要ないというわけではない.「障がい」の概念を理解し,RA患者を「疾患単位」ではなく,「生活しにくさを持つ人間」として捉え,機能訓練や整形外科的手術後の後療法といった狭義のリハのみならず,生活指導,生活環境の改善,社会への適応能力の向上といった国際生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health;ICF)に基づいた,評価とリハを行うことが重要である.
       本稿では,これまでに報告されているRAリハのエビデンスを解説し,新しい時代を迎えたRA治療におけるリハの意義について述べる.
  • 井上 祐三朗, 冨板 美奈子, 皆川 真規, 下条 直樹, 河野 陽一
    2011 年23 巻1 号 p. 22-28
    発行日: 2011/03/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
       小児リウマチ性疾患患者では原疾患と治療の双方が成長障害と骨代謝異常の原因となりうる.多関節型および全身型若年性特発性関節炎(JIA)においては,TNF-α,IL-1β,IL-6などの炎症性サイトカインが,成長軟骨板の軟骨細胞の増殖の抑制や細胞死を誘導し,長管骨の骨伸長が抑制され成長障害をきたす.また,小児リウマチ性疾患に対する中心的な治療薬剤であるグルココルチコイドは,下垂体からの成長ホルモンを抑制し成長障害を誘導する.
       骨代謝に対しては,RAと同様にJIAにおいても,TNF-αやIL-1βなどが滑膜細胞やT細胞におけるRANKLの発現を誘導し,これにより誘導される破骨細胞が関節破壊だけでなく骨塩量低下も引き起こすと考えられている.また,成人と同様に小児期においてもステロイド性骨粗鬆症が大きな問題である.本来小児期は成長に伴って骨塩量が増加する時期であるため,原疾患や治療により骨塩量低下をきたしPeak Bone Massが減少した患者は,小児期のみならずその後の一生にわたり骨折リスクを有することになる.
       成長障害に対するリコンビナント成長ホルモン,骨粗鬆症に対するビスフォスフォネート製剤の投与が,海外を中心に試みられ一定の効果を認めているが,本邦においてはこれらの積極的な介入はまだ一般的ではなく,今後の臨床研究が望まれる.
原著
  • 浅子 来美
    2011 年23 巻1 号 p. 29-36
    発行日: 2011/03/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    目的:Behçet病(BD)ではHLA-B51との相関が指摘されているが,近年HLA-A26との関連も示唆されている.今回,当院におけるBD患者のHLA-A26発現頻度とその臨床像の関連につき検討した.
    対象・方法:1989年~2009年の間に当院にて厚生労働省の診断基準によりBDと診断された患者で,HLAの判明している161例(男性76例,女性85例)を対象とした.
    結果:HLA-B51陽性率は48.4%,HLA-A26陽性率は29.2%で,いずれも日本人の健常者における発現頻度と比較し有意に高かった(p<0.0001,p=0.0135[Fisher’s exact probability test]).HLA-A26陽性群では,HLA-A26陰性群と比較し血管BD(4.3% vs.21.1%,p=0.0085)と関節炎(23.4% vs.41.2%,p=0.0463)が有意に少なく,有意差はないが腸管BDが多い傾向を示した.HLA-B51陽性とHLA-A26陽性については連鎖不平衡になかった.
    結論:以上より,HLA-A26発現頻度は日本人BDでは有意に高いことが確認され,これが日本人におけるBD臨床像の特徴に一部関連する可能性が示唆された.
  • 塩沢 和子, 田中 泰史, 吉原 良祐, 中川 夏子, 香山 幸造, 村田 美紀, 寺島 康浩, 田中 千尋, 山根 隆志, 松田 茂, 横 ...
    2011 年23 巻1 号 p. 37-47
    発行日: 2011/03/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)患者に対するアダリムマブ(ADA)の臨床成績を検討する.
    方法:2008年6月~2010年8月までの2年3カ月間に甲南加古川病院と神戸大学リウマチセンターで新規にADAを投与されたRA患者159名(年齢57.8±12.8,女性129名,男性30名,クラス2.1±0.6,ステージ2.9±1.0)を対象に治療成績を検討した.同時に,生物製剤初回導入患者群(ナイーブ群)と他の生物製剤からの変更患者群(スイッチ群)の治療成績,MTXの併用効果,関節破壊抑制効果を調査した.
    結果:⑴159例中115例(72.3%)はナイーブ群,44例(27.7%)はスイッチ群であった.ADA開始1年の時点でCRP,ESR,MMP-3はナイーブ群・スイッチ群とも前値より有意に改善したが,改善の度合いはナイーブ群が良かった.ADA継続率に関して,ナイーブ群(115例)およびインフリキシマブからの切り替え例(17例)は6ケ月後約80%が継続していたが,エタネルセプトからの切り替え例(17例)は38%,2剤以上生物学的製剤を処方後の切り替え例(8例)は62%であり,ADA継続率はナイーブ群がスイッチ群に較べて良好であった.⑵159例中108例(67.9%)はADA/MTX併用群,51例(32.1%)はADA単独投与群であった.全経過を通じ,DAS28/CRP4は両群とも前値より有意に改善したが,MTX併用群はCRPが3~9カ月後ADA単独群に比べ有意に低下した.⑶159例中ADA開始後1年を経過した46例のうち14例(30.4%)は,手レントゲン写真で評価したHeijde変法シャープスコアが悪化しなかった.同様に46例中39例について年間関節破壊進行度(ΔTSS)を評価したところ,ADAは関節破壊を有意に抑制した.
    結語:ADAはナイーブ群で有効性と継続率が高く,その効果はMTX併用によって増強された.また,ADAは関節破壊を抑制することが示された.
  • 戸田 佳孝, 月村 規子, 槻 浩司
    2011 年23 巻1 号 p. 48-54
    発行日: 2011/03/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    目的:RAの有痛性胼胝に対する装具療法の効果を画像的に評価した研究は少ない.我々は超音波診断装置(エコー)を用いて中足骨趾節間(MTP)関節の配列を観察する方法を考案し,装具療法の効果判定に応用した.
    方法:エコーを用いて立位時の第2 MTP関節と第3 MTP関節の頂点を結ぶ線と第3と4MTP関節の頂点を結ぶ線のなす角度を計測し,MTP関節列隆起角とした.足底部に有痛性胼胝のある37例(有痛性胼胝群)と足部に痛みのない65例(無症候性群)の間でMTP関節列隆起角を比較した.次いで,有痛性胼胝群を無作為に外反母趾矯正とともに横アーチを補高する装具を装着する群(試験装具群)と単なる外反母趾用装具を装着する群(対照装具群)に分け,二つの装具がMTP関節列隆起角と4週間装着による足部疼痛指数(FFI)の改善に与える影響を比較した.
    結果および考察:MTP関節隆起角は無症候群に比べて有痛性胼胝群で有意に低かった(P<0.0001).4週間装具を装着した31例では試験装具群(15例)ではMTP関節隆起角が6.5±5.5度矯正され,治療前に比べて治療後はFFIが有意に改善した(P=0.002).対照装具群(16例)の隆起角の矯正は0.5±0.89度であり,FFIが有意な改善はなかった(P=0.12).以上よりRAの有痛性胼胝症状には生体力学的にも臨床的にも横アーチの矯正が必要であると結論した.
  • 岸田 愛子, 徳永 大作, 藤原 浩芳, 小田 良, 小橋 裕明, 遠山 将吾, 北條 達也, 久保 俊一
    2011 年23 巻1 号 p. 55-61
    発行日: 2011/03/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    目的:Sauvé-Kapandji法(S-K法)の術後合併症として,近位尺骨の遠位断端部(ulnar stump)に,疼痛を伴うclickを生じる例が存在する.Ulnar stumpの位置や形状とclickの発生の関連について検討した.
    対象と方法:関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者51例60手を対象とした.経過観察時の単純X線正面像で橈骨遠位関節面からulnar stumpまでの距離をulnar distance(以下UD)と定義して計測した.有痛性click(+)例と無痛性click(+)例で,UDとの関連を検討した.尺骨径に対するulnar stumpの横径が50%以下の例をulnar stumpのtapering(+)と定義した.また,橈骨に生じるscallopingの有無を検討した.Ulnar stumpのtaperingおよびscallopingの有無とclickの関連を検討した.
    結果:60手のうち,無痛性clickを40.0%に,有痛性clickを8.3%に認めた.UDは24.5±5.8mmであった.UDと有痛性,無痛性clickの存在との間には有意な関連を認めなかった.Taperingは(+)例が35%,(-)例が65%であった.Tapering(-)例では有痛性click(+)例が9.3%と若干高率であったが,clickとtaperingの有無の間に有意差は認めなかった.またscallopingは35%に認め,そのうち無痛性click症例は15%,有痛性click症例は1.7%であった.考察:今回の検討では有痛性clickの発生率は8.3%であった.有痛性clickの発生とUDの間に相関を認めなかった.これは,当初からUDが平均24.5mm と比較的遠位で骨切りを行っている例が多かったことも要因として考えられる.有痛性clickはtaperingのある例で4.8%であったのに対し,taperingのない例では10.2%に生じていたが有意差は認めなかった.有痛性clickはむしろscallopingのない例に多い傾向を認めたが,scallopingは有痛性click発生との相関はないと考えた.
  • 渡部 龍, 白井 剛志, 田島 結実, 藤井 博司, 高澤 徳彦, 石井 智徳, 張替 秀郎, 鈴木 直輝, 竪山 真規, 糸山 泰人
    2011 年23 巻1 号 p. 62-67
    発行日: 2011/03/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    目的:Churg-Strauss症候群(CSS)に伴う臓器障害は多彩で,皮膚や神経だけでなく,ときに心臓,肺,腎臓,消化管なども障害される.また,病理組織においては,好酸球浸潤を伴う壊死性血管炎や血管外肉芽腫の存在が特徴的とされている.そこで,当科で経験したCSS12例の臓器障害を含めた臨床的特徴と,得られた病理所見について検討した.
    対象・方法:当科外来通院歴のあるCSS12例を対象とし,臨床病理学特徴を後方視的に検討した.
    結果:
    ①患者背景
    男性5例,女性7例,平均発症年齢は51.8歳,ANCA陽性は7例(58%)であった.
    ②臓器障害
    全例で気管支喘息と多発単神経炎を認め,皮膚病変9例(75%),副鼻腔炎8例(67%),心病変5例(41%),肺病変5例(41%),感覚器病変4例(33%),中枢神経病変2例(17%),消化器病変と腎病変は1例ずつ(8.3%)であった.ANCAの陽性例で皮膚病変が有意に多く,陰性例で心病変と肺病変が多い傾向を認めた.
    ③病理学的検討
    皮膚生検(6例)では全例で好酸球浸潤を認めたが,壊死性血管炎と血管外肉芽腫は1例ずつであった.また,神経生検(4例)では,血管炎や血管外肉芽腫の所見はみられなかった.
    結論:当科におけるCSS12例の検討でも多彩な臓器障害がみられ,ANCA陽性例では皮膚病変が多かった.しかし,特徴的とされる病理像が得られた症例は稀であった.
  • 西脇 農真, 大西 翼, 増山 敦, 横江 勇, 鶴田 信慈, 原岡 ひとみ
    2011 年23 巻1 号 p. 68-73
    発行日: 2011/03/30
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
       Henoch-Schönlein紫斑病(HSP)は小血管の障害が主ではあるが,稀ながら脳出血,脳梗塞,心筋梗塞,小腸梗塞など,中~大血管障害の報告がある.我々は腹部症状が先行し,出血性腎梗塞を合併した非常に稀な成人発症HSPの症例を経験したので報告する.
臨床リウマチ医のための基礎講座
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