抄録
現在,日本国内での抗SS-A抗体及び抗SS-B抗体の測定は,ほとんどが酵素免疫測定法を原理とする検査試薬で行われており,数値データとして報告されている.しかし,その値は試薬メーカーごとに値付け方法が異なり,標準化されていない.抗SS-A抗体と関連するCHB(congenital heart block)のリスクをその抗体価から推測することを目的として,試薬メーカー6社7試薬の測定値の関係を明らかにし,一定の基準を設けることで各試薬の測定値を一致させることができるか検討した.
Pool血清,CDC標準品,臨床検体を用いて酵素免疫測定法による抗SS-A/B抗体の標準化を試みたが現状では難しいことがわかった.多施設共同研究の症例データベースの解析から,抗SS-A抗体がDID(double immunodiffusion)法で32倍以上であることが,CHBのリスクを推測する因子として抽出されているため,DID法力価32倍に相当する各試薬の測定値を推定した.しかし,この推定値において陰性と判定されるCHB例が認められたこと,また,酵素免疫測定法は主な臨床での使用目的が「定性判定」であるため,各社試薬での測定値が本来の抗体力価として報告されていないことが多い(特に高力価例について)現状を考え,DID法での確認が必要な基準案を作成した.その結果,Bio-Radで100EU以上,INOVAで80units以上,CosmicでIndex値100以上,TFBで300U/ml以上,Phadiaで240U/ml以上,MBL MESACUPでIndex値100以上,MBL STACIAで500U/ml以上を示した検体についてはDID法での確認が必要であることがわかった.