臨床リウマチ
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総説
関節リウマチにおけるTreat-to-targetへの期待と問題点
藤井 隆夫
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2012 年 24 巻 4 号 p. 241-246

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抄録

   糖尿病などの慢性疾患では,タイトコントロールによって長期アウトカムが改善する.関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)における最適なアウトカム達成のためのリコメンデーションを作成する目的でTreat to Target(T2T:目標達成に向けた治療)Steering Committeeが組織され,4項目の基本的な考え方と10項目のリコメンデーションが策定された.T2Tリコメンデーションでは,総合的活動性指標を用いて適切な間隔で評価を行うとともに定期的に治療を見直し,早期に寛解あるいは低疾患活動性を達成することを推奨している.さらにいったん達成された治療目標は経過を通じて維持し,関節の構造的変化や身体機能障害にも注意をはらうべきであると記載された.また当然ではあるが,RA治療は医師と患者のshared decisionであることが強調された.早期のRAでは骨破壊が急速に進行する症例(rapid radiographic progression)もあるため画像評価にも気を配ること,また合併症の多い患者や罹病期間の長い高齢者では安全性に十分考慮する必要がある.今後本邦においてもエビデンスの集積が望まれるが,日常臨床でも,患者に総合的活動性指標の数値を示し,T2Tリコメンデーションに基づいて今後の治療をディスカッションすることは,すべてのRA患者に対して有意義と考えられる.

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© 2012 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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