2018 年 30 巻 3 号 p. 192-198
トシリズマブは関節リウマチにおいて重要な役割を果たすとされるIL-6の信号伝達を阻害する抗IL-6受容体抗体製剤である.MTX未使用, DMARDsやMTX効果不十分,TNF阻害薬効果不十分など様々な関節リウマチ患者においてMTX併用の有無に関係なく高い効果を発揮することが知られている.その効果は他の関節リウマチの生物製剤に比べて遜色なく,特にMTX非併用ではTNF阻害薬よりも強い効果が期待できる.しかし強直性脊椎炎や乾癬性関節炎ではTNF阻害薬のような効果は期待できないのですべての関節炎に効果を発揮する訳では無い.トシリズマブ投与中はCRPが陰性となるので,CRPによる疾患活動性や感染症の評価はあてにならないことに注意が必要である.トシリズマブは中和抗体ができにくく長期継続性に優れる一方で,投与中止による再燃が多く,drug-freeでの寛解維持は期待しにくく,寛解後は投与間隔の延長が好ましい.最も気を付けるべき副作用は感染症であるがトシリズマブによって感染症状がマスクされることに注意が必要である.点滴と皮下注射の投与法を選べることや薬価が比較的安いこともこの製剤の魅力である.