2018 年 30 巻 3 号 p. 231-240
目的:全身性強皮症(SSc)に伴って生じる手指を中心とした皮膚潰瘍は,虚血を病態の中心としており治療抵抗性かつ高頻度で起こる病態である.現在,こうした潰瘍に対する治療は,薬物療法として,各種血管拡張薬,抗凝固薬,抗血小板薬を中心とした加療が行われているが,多くの症例で満足できる効果が得られていない.同病態は多大な社会生活の犠牲を伴い,使用される薬剤も高価で社会的にみても大きな問題をはらんだ難治性病態であり,新たな治療法が切実に必要とされている.新規治療法開発において必要とされることは,検証的な試験により治療法の有用性を科学的に証明することであるが,当科では低出力衝撃波療法を,本病態に対する新規治療法として確立することを試みている.
方法:検証試験を行うためには,その前提として試験デザインを決定するための基礎的な情報の収集が必要である.そのために通常治療を行ったときの皮膚潰瘍の自然歴を検討する観察研究と,低出力衝撃波療法を行ったときの有効性・安全性を探索するPOC(proof of concept)試験としての臨床試験を行った.
結果;通常治療を行ったときの自然歴の観察研究と,低出力衝撃波療法を用いたPOC試験の二つの臨床研究から得られた結果をもとに,新たに検証試験としての低出力衝撃波療法のSSc皮膚潰瘍に対する有効性を確認するための試験を設計した.実際に,これを基に医師主導治験を施行し,現在その結果の解析をおこなっている.