臨床リウマチ
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誌上ワークショップ 膠原病の難治性病変
血球貪食症候群
熊倉 俊一
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2018 年 30 巻 3 号 p. 241-251

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抄録

 血球貪食症候群(HPS)は,網内系におけるマクロファージの血球貪食を病理学的特徴とする難治性疾患である.臨床症状として持続する発熱,肝・脾腫大,リンパ節腫脹,血球減少,凝固異常,肝機能障害,高フェリチン血症などが見られる.HPSは,一次性(遺伝性)と二次性(反応性)に分類され,自己免疫疾患に関連して生じる二次性HPSは,自己免疫関連血球貪食症候群(autoimmune-associated hemophagocytic syndrome, AAHS)と言われる.

 HPSの診断は,臨床所見と検査所見により総合的に行われるが,自己免疫疾患を基礎疾患とする場合は,自己免疫疾患自体の症状とHPSとしての症状が同一であることがあり,診断の妥当性や信頼性が問題となっている.今後,HPSに特異的な所見による診断基準の策定が求められる.

 HPSは,しばしば致死的な経過を辿るため,速やかな治療の開始が必要である.AAHSの治療は,ステロイド療法が一般的であり,58%の症例が同療法にて改善する.ステロイド療法無効例には,シクロスポリン療法,シクロホスファミド・パルス療法または免疫グロブリン療法などが実施され,それらの中では,シクロホスファミド・パルス療法の有効性が高い.近年では,TNFまたはIL-6阻害薬などの生物学的製剤の有効例が報告されている.生物学的製剤は,低分子シグナル阻害薬とともに,今後AAHSの治療選択に重要な位置を占めるものと考えられる.

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© 2018 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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