日本補綴歯科学会誌
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原著論文
全部鋳造冠,前装鋳造冠の生存時間に関する多機関共同後ろ向き研究
堀坂 寧介久保 至誠丸山 和久大井 孝友難波 秀樹山本 修平桃井 保子介田 圭江越 貴文平 曜輔
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2024 年 16 巻 1 号 p. 49-57

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抄録

目的:個人歯科診療所における鋳造冠の生存時間を推計し,それに影響を及ぼす因子を探索する.

方法:6か所の個人歯科診療所を調査期間中に受診した20歳以上の患者の中から,初めての来院から10年以上経過し,鋳造冠を装着した既往があり,本研究への参加の同意が得られた者を研究対象者とした.選択バイアスを小さくするため,最初に装着した全部鋳造冠と前装鋳造冠のデータのみを診療録から収集した.また,成績に影響を及ぼすと考えられる因子についても調査した.イベントを再治療と定義し,装着時から再治療の診断が下された時点あるいは最終来院時までを生存時間とした.生存分析には,カプランマイヤーとログランク検定,Cox比例ハザードモデルを使用した.

結果:682人の研究対象者から全部鋳造冠 (MC:542歯)と前装鋳造冠 (FC:282歯)の計824歯の生存時間に関する情報が得られた.10年後の生存率はMCで74.2%,FCで75.3%,生存時間の中央値はMCで20.8年,FCで19.7年と推計された.再治療の主な理由は,脱落,齲蝕,根尖性歯周炎,歯根破折,補綴的要求であった.生存時間に有意に影響する因子は,「初回製作か再製作か」,「術者」,「装着時の残存歯数」,「装着時の再治療リスク」であることが判明した.なかでも再製作の場合,生存時間が著しく短くなった(ハザード比3.4).

結論:鋳造冠の生存時間の中央値は20.7年と推計されたが,再製作したときは14.6年と有意に短くなることが明らかになった.

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© 2024 公益社団法人日本補綴歯科学会
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