臨床リウマチ
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誌上ワークショップ RA治療戦略におけるprecisionmedicine─新規バイオマーカーを用いて─
関節リウマチ患者のTNF阻害薬治療効果と関連する遺伝子発現シグネチャの同定
中村 誠二鈴木 勝也金子 祐子竹内 勤天野 宏一
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2018 年 30 巻 4 号 p. 300-307

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抄録

目的:関節リウマチ(RA)患者の遺伝子発現情報を用いたTNF阻害薬(TNFi)効果予測遺伝子探索研究に関して,従来の研究の問題点(対象条件,N数,遺伝子同定方法,臨床背景バイアス)を踏まえた研究デザインを適用し,検討を試みた.

対象及び方法:bDMARDs投与歴がなく,MTX併用でTNFiの投与が決定したRA患者を対象とし,関連研究としては過去最大規模の219例の遺伝子発現情報を取得した.発現差が堅牢な遺伝子を抽出すべく,治療6か月後の6種の活動性指標(DAS28,CDAI,EULAR,ACR,SJC28,CRP)各々について2パターンの効果あり(RES)/ なし(NRES)基準を設定し,計12の2群比較を行った.ベースラインの臨床背景バイアスを調整してなお,4比較以上で共通して有意差が検出される遺伝子を抽出した.

結果:効果予測遺伝子として34遺伝子を同定した.NRESで高発現するクラスタにはI型インターフェロン関連遺伝子群が,RESで高発現するクラスタにはリボソーム遺伝子群が認められた.遺伝子発現情報と臨床情報を組み合わせることで,臨床情報のみよりも高い正確度(64.5~83.6%)でTNFiの効果が判定できた.

結論:血液遺伝子発現情報には,臨床情報とは独立のTNFi効果予測因子が存在し,双方を組み合わせることで予測精度の向上が期待できる.今後前向き試験による検証を進めていく.

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© 2018 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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