2019 年 31 巻 2 号 p. 145-154
【目的】イグラチモド(IGU)は2012年に薬価収載された新規抗リウマチ薬である.IGUの腎機能に与える影響を検討する.【対象・方法】新潟県立リウマチセンターで2015年から2016年の間にIGUを処方開始した201例(男性58例,女性143例,年齢68(60-77)歳)で開始前,開始後3カ月,6カ月の臨床データを2017年12月に診療録から後方視的に調査した.IGUが中止された症例では中止時と中止後3ヶ月のデータを調査した.【結果】開始後3ヶ月で関節リウマチの疾患活動性は有意に低下した(DAS28-ESR 4.1(3.2-4.8)v.s. 3.2(2.3-4.1), p<0.001).estimated glomerular filtration rate(eGFR)は開始前と比較して3ヶ月後で有意に低下した(eGFR 77.3(63.9-91.2), 68.3(54.8-81.4), p<0.001).6ヶ月以内に51例がIGUを中止していたが,7例は腎機能低下が中止原因だった.中止例では中止時に比較して中止後3ヶ月でeGFR値は有意に上昇した(eGFR 70.7(57.6-79.7)v.s. 75.7(63.4-88.7), p=0.002).多変量解析ではeGFR10ml/min以上低下に関わるリスク因子として非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の併用ありが抽出された.【結論】重篤な腎機能障害は少なかったが,IGU開始後,有意にeGFR値は低下した.IGU使用時には肝障害だけでなく腎障害にも留意する必要がある.しかし中止後は回復がみられており,可逆性の変化であることが示唆された.