臨床リウマチ
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31 巻, 2 号
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誌説
総説
  • 松下 功
    2019 年 31 巻 2 号 p. 88-97
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル フリー

     現在,関節リウマチ(RA)の実臨床に用いられている画像検査は,単純X線検査,関節超音波検査そしてMRIである.単純X線写真ではポケット状骨びらん,関節裂隙の狭小化などが確認できる.Modified total Sharp scoreは,初期の微細な変化の評価に有用であるが,対象は小関節に限られている.大関節の評価にはLarsen gradeが広く使用されているが,微細な変化を読み解くことはできない.ARASHI scoring systemはより詳細に大関節破壊を評価でき,今後活用されることが望まれる.

     超音波検査は滑膜の炎症と骨病変を同時に評価可能な強力なツールである.微細な滑膜病変をとらえることができるため,RAの超早期診断において有用である.関節超音波所見を2010ACR/EULAR分類基準のスコアリングに用いることで,分類不能関節炎を高率にRAと分類できることが報告されている.超音波検査におけるパワードプラシグナルが残存する場合は,関節破壊が生じやすいことなどが確認されている.

     MRIは滑膜炎,骨浸食(骨びらん)および骨炎(骨髄浮腫)の抽出に優れている.MRIでは単純X線写真に比して約3倍骨侵食が検出されたとの報告もある.MRIにおける骨炎の所見はX線検査や関節超音波検査では捉えることができないMRI特有の重要な所見である.MRIにおける骨炎は境界不明瞭な異常信号として認められ造影効果を示す.2010ACR/EULARの分類基準に骨炎所見を加えると,早期にRAと診断できるとの報告もある.またMRIにおける骨炎は骨侵食の前駆状態と考えられている.

原著
  • 元村 拓, 松下 功, 平岩 利仁, 関 英子, 木村 友厚
    2019 年 31 巻 2 号 p. 98-103
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ(RA)患者において骨密度を長期で追跡した報告は少ない.baselineと10年以上経過後の骨密度および臨床データを解析し,その特徴を検討した.方法:当院においてリウマチ教育入院をしたRA患者の中で,入院時と10年以上経過後に腰椎および股関節の骨密度を測定できた36例を対象とした.Baselineとfollow-up時の患者背景,臨床データを調査し,腰椎YAM値5%以上増加した増加群(n =21)と増加が5%未満であった非増加群(n =15)を比較検討した.結果:年齢は中央値60.5歳,罹病期間は9.5年で,平均follow-up期間は10.4年であった.骨密度(YAM値)の中央値は,腰椎では81.2%から91.0%に増加し,股関節では80.6%から77.0%に低下していた.単変量解析では,増加群でbaselineの年齢が高いこととステロイド投与量が少ないことが抽出されたが,生物学的製剤使用の有無は関連しなかった.多変量解析では,骨吸収抑制薬介入のみが増加群において有意に高率であった.結論:RA患者における長期の骨密度変化を調査した.長期間の腰椎骨密度増加には,適切な骨粗鬆治療介入が必要である.

  • Ichiro Yoshii, Masakazu Kondo, Norihiro Nishimoto, Akira Sagawa, Kou K ...
    2019 年 31 巻 2 号 p. 104-111
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ(RA)患者の高齢化とともに生じる,意識の変化とリウマチ医の治療意識との間の齟齬を調査する目的で,開業リウマチ医(RA医)20名とRA患者1066名を対象にアンケート調査を行った.

    対象・方法:質問項目は年齢階層,居住地域,開業形態(RA医)もしくは労働形態(RA患者),関節外症状対応,運動機能低下対応,認知機能低下対応,入院必要時対応,寝たきり状態の対応,看取り,イメージする医療連携の10項目で行った.RA患者とRA医の間の合致,乖離をそれぞれの項目でchi square testを用いて統計学的評価した.

    結果:大部分のRA患者はかかりつけRA医(主治医)にRAだけで無く,合併症も含めた治療を望んでいた.殆どのRA医もそれに応えていた.主治医を信頼しているRA患者が殆どと思われ,入院しても主治医に診てもらいたいと望んでいた.RA患者とRA医の間の齟齬があったのは,看取りに関して,患者年齢が高くなればなるほど具体的なイメージがあり(p<0.05),具体的要望として主治医に看取ってもらいたいと望むRA患者が殆どであったのに対し,かかりつけRA医で看取り対応できるのは3分の1であった(p<0.05).

    結論:日本において,RA医は一般かかりつけ医と同様の働きを患者に求められている.開業RA医は,RA患者の老化と真摯に向き合う必要性に迫られている.

  • Yutaka Motohashi, Koji Kikkawa, Masaaki Miya
    2019 年 31 巻 2 号 p. 112-125
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル フリー

    目的:ガラクトース欠損抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA(G0))が最近報告されてきている.抗ガラクトース欠損IgG抗体(CARF)とACPA(G0)免疫複合体がマクロファージを活性化してサイトカインの産生を増強すると推定される.今回,実臨床における,関節リウマチ(RA)患者におけるインフリキシマブまたはエタネルセプト投与前後のCARF値の変化を解析した.

    方法:80人の患者データをレトロスペクティブに集めた.投与前(M0)と投与後6ヶ月(M6)の所見を評価した.CARFは電気化学発光免疫測定法で測定され,ACPAは随時一度だけ抗CCP抗体の化学発光免疫測定法で測定された.

    成績:CARFM0はACPAM0とかなりの相関を示した(順位相関係数rs=0.62,n=37,p=4.1E-05).CARFM0とACPAM0はCRPM0と有意に相関した(それぞれ,rs=0.34,n=80,p=0.002,rs=0.47,n=37,p=0.004).ベースラインからのCARF の%低下割合は有意で(メディアン=-42.3%,p=0.0002),DAS28-CRPの%低下割合と有意に相関した(rs=0.44,p=4.8E-05).

    結論:RAのインフリキシマブまたはエタネルセプト治療下において,抗ガラクトース欠損IgG抗体(CARF)値の変化率は疾患活動性の変化率と相関する.

  • 原田 智也, 山﨑 章, 伊藤 悟, 永村 徳浩, 金 聲根, 宗村 千潮, 村川 洋子, 清水 英治
    2019 年 31 巻 2 号 p. 126-134
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル フリー

    【目的】血管炎症候群は多彩な症状を呈し,診断の遅れは生命・臓器予後に影響を与えるため,早期診断が重要である.今回我々は山陰地区で非専門医を含めた血管炎診療の実態調査を行った.【対象・方法】鳥取県米子市と島根県出雲市で勤務し,主な標榜診療科が内科,整形外科,皮膚科の医師を対象として,2017年11月から12月にアンケート調査を実施した.【結果】開業医98名(回答率47.6%),勤務医25名(同62.5%)から回答が得られた.各種ガイドラインの認知度は「ANCA関連血管炎の診療ガイドライン」が最も高く,勤務医では76%であったが,開業医では14.3%と低かった.血管炎を疑う徴候として,腎機能障害や血尿・蛋白尿が最も多く挙げられ,専門医へ紹介するタイミングとして,腎機能障害が進行した場合が最も多く挙げられていた.【結論】血管炎に関するガイドラインの認知度は十分ではなく,臓器障害が進行してから専門医へ紹介される場合が多かった.

  • 田幸 稔, 林 真利, 船村 啓, 前田 真崇, 松原 浩之
    2019 年 31 巻 2 号 p. 135-144
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル フリー

    目的:薬剤アドヒアランス不良な関節リウマチ(以下,RA)患者の自宅に薬剤師が訪問し薬剤指導を行う制度「在宅患者訪問薬剤管理指導」(以下,訪問薬剤指導)の教育効果を検証すること.

    対象・方法:主治医において薬剤アドヒアランス不良と思われたRA患者のうち,訪問薬剤指導前後で薬剤の用法および用量,投与間隔など治療内容が全く変化なかった19名を対象とした.これら19名に対して年齢,罹病期間,生物学的製剤使用率,メトトレキサート(以下MTX)使用率及び投与量,認知症の有無,同居家族の有無,訪問薬剤指導施行日から受診日までの期間,訪問薬剤指導前後でのSDAIを調査した.

    結果:対象患者の年齢は74.4±6.1歳(平均±標準偏差,以下同),疾患期間は144.2±114.5月,生物学的製剤使用は8名(42.1%),MTX使用率及び投与量は84.2%,6.6±2.7 mg /週,認知症の患者は2名,1人暮らしの患者は8名,訪問薬剤指導施行日から受診日までの期間は66.9±20.5日であった.そして,訪問薬剤指導前後でSDAIは7.99±6.88から4.39±3.47(p = 0.0352)に改善した.訪問薬剤指導後のアンケートでは,説明時間の配慮,相談のしやすさ,指導後の服薬はしかりできる,などの評価が高かった.

    結論:薬剤アドヒアランス低下RA患者に対する訪問薬剤指導はRA疾患活動性を低下させ,患者のアドヒアランス向上に有用な制度である.

    COI:なし

  • 長谷川 絵理子, 小林 大介, 伊藤 聡, 石川 肇, 成田 一衛
    2019 年 31 巻 2 号 p. 145-154
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル フリー

    【目的】イグラチモド(IGU)は2012年に薬価収載された新規抗リウマチ薬である.IGUの腎機能に与える影響を検討する.【対象・方法】新潟県立リウマチセンターで2015年から2016年の間にIGUを処方開始した201例(男性58例,女性143例,年齢68(60-77)歳)で開始前,開始後3カ月,6カ月の臨床データを2017年12月に診療録から後方視的に調査した.IGUが中止された症例では中止時と中止後3ヶ月のデータを調査した.【結果】開始後3ヶ月で関節リウマチの疾患活動性は有意に低下した(DAS28-ESR 4.1(3.2-4.8)v.s. 3.2(2.3-4.1), p<0.001).estimated glomerular filtration rate(eGFR)は開始前と比較して3ヶ月後で有意に低下した(eGFR 77.3(63.9-91.2), 68.3(54.8-81.4), p<0.001).6ヶ月以内に51例がIGUを中止していたが,7例は腎機能低下が中止原因だった.中止例では中止時に比較して中止後3ヶ月でeGFR値は有意に上昇した(eGFR 70.7(57.6-79.7)v.s. 75.7(63.4-88.7), p=0.002).多変量解析ではeGFR10ml/min以上低下に関わるリスク因子として非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の併用ありが抽出された.【結論】重篤な腎機能障害は少なかったが,IGU開始後,有意にeGFR値は低下した.IGU使用時には肝障害だけでなく腎障害にも留意する必要がある.しかし中止後は回復がみられており,可逆性の変化であることが示唆された.

誌上ワークショップ 高齢RA患者に対するマネージメント
  • 松井 聖, 吉川 卓宏, 佐野 統
    2019 年 31 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル フリー

     日本全体で高齢化が進んでいるが,RA患者は治療がよくなり,寛解に持ち込むことができるようになったため,生命予後がよくなっている.このため,RA高齢者の治療においてどのように行っていくことがよいか急務の課題と考える.

     一方,高齢者の腎機能は,日本腎臓病学会から慢性腎臓病(CKD)のガイドライン2012が出されている.このデータからは,年齢別のCKDの頻度をみてみると,eGFR<60mL/分/1.73m2の割合は男性の場合,60〜69歳で約17%,70〜79歳で約28%,80歳以上で約45%,女性の場合は,60〜69歳で約16%,70〜79歳で約32%,80歳以上で約47%となっている.つまり,70〜79歳では3人に1人,80歳以上では2人に1人の割合で腎機能低下があり,腎機能を悪化させる薬剤が使いにくい現状があることを十分認識した上で治療を行う必要がある.

     日本腎臓病学会の腎機能の悪い時の薬物使用のためにCKDのガイドライン2012では,クレアチニンクリアランス(Ccr/分)が>50と10〜50,<10と透析(HD)をしている区分になっている.RA治療薬をみてみると,Ccr/分が10〜50,<10とHDの区分で,使用できる薬剤はアダリムマブ,インフリキシマブ,エタネルセプト,トシリズマブ,サラゾスルファピリジンであった.メトトレキサートはCcr>50で専門医に相談となっている.2012のガイドラインであるので現在,使われている生物学的製剤,JAK阻害薬は含まれていない.

     また,我々も参加しているNinJaデータベースからの今年度の日本リウマチ学会の発表では,2012,2013,2014年の3年間登録された関節リウマチ患者のeGFR<30mL/分/1.73m2の群ではeGFR<60~100mL/分/1.73m2の群, eGFR<30~60mL/分/1.73m2の群と比較して,DAS28-ESR,DAS28-CRP,CDAI,SDAIのRA活動性指標において有意な低下を認めなかった.つまり,ステージG4(eGFR<15~29mL/分/1.73m2),G5(eGFR<15mL/分/1.73m2)CKD合併RA患者は活動性コントロールが困難である可能生が示された.

     これらの既存の報告を踏まえて,当科のデータを示しつつ,RA高齢者の腎機能とRA治療の薬剤の選択について討論を行いたい.

誌上ワークショップ 関節リウマチの新規治療
  • 中山田 真吾, 田中 良哉
    2019 年 31 巻 2 号 p. 162-168
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(RA)の治療では,メトトレキサート(MTX)などの従来型合成抗リウマチ薬(csDMARD),及び,生物学的抗リウマチ薬(bDMARD)による早期からの適切な治療介入により,臨床的,構造的,機能的な寛解が目標となった.しかし,これらの治療でも治療抵抗性の症例が多く存在する.Janus kinase(JAK)阻害薬は,サイトカインシグナルを媒介するキナーゼのJAKを選択的に阻害し,関節リウマチ(RA)の病態へのマルチターゲット作用により臨床効果を発揮する.高分子の蛋白製剤であるbDMARDは静脈内または皮下注射での投与に限定されるのに対し,JAK阻害薬は内服可能な分子標的合成抗リウマチ薬(tsDMARD)であり,bDMARDと同等の効果を有する.本邦では,2013年にトファシチニブ,2017年にバリシチニブがRAに対して上市された.実臨床でのJAK阻害薬の優れた臨床効果が確認されつつあるが,JAK阻害薬の安全性への懸念が少ないわけではなく,生物学的製剤と同様,感染症などの十分なスクリーニングのもと導入すべきである.これまでの臨床試験や市販後調査で蓄積されたJAK阻害薬の有効性と安全性の知見をもとに,リウマチ専門医によるJAK阻害薬の適正な使用が望まれる.

  • 今井 俊夫, 久保井 良和
    2019 年 31 巻 2 号 p. 169-177
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(RA)は,関節の滑膜病変や骨破壊による関節破壊を主体とする炎症性自己免疫疾患である.関節病変部位では,滑膜線維芽細胞の著しい増殖と,多数の白血球の浸潤が認められる.白血球の組織への浸潤は,ケモカインとその受容体の相互作用により,時空間的に厳密に制御されている.フラクタルカインとその受容体CX3CR1は,RA患者の病変部位における発現が報告されていることから,RA治療の標的候補として考えられる.抗フラクタルカイン抗体は,非臨床RAモデルであるマウスコラーゲン誘発関節炎(CIA)において,白血球浸潤抑制による関節炎改善効果を示し,さらにCX3CR1陽性破骨前駆細胞の浸潤を直接的に阻害することにより骨破壊抑制効果を示すことが明らかとなった.ヒト化抗フラクタルカイン抗体(E6011)は,RA患者を対象とした臨床第Ⅰ相試験において,良好な安全性と忍容性とともに有効性を示唆する結果が得られており,現在,臨床第Ⅱ相試験を実施中である.本稿では,フラクタルカインとCX3CR1のRA病態形成における役割と,フラクタルカイン阻害によるRA治療の可能性について概説する.

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